気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

歴史・時代小説

秋月記 - 葉室麟

葉室麟さん、初読み 九州の小藩秋月藩の財政再建に奔走した「間小四郎」の半生を描いたこの作品、期待以上でした。 家老宮崎織部の専横を正すために、志を同じくする仲間たちと立ち上がり、いわゆる「織部崩れ」を為すまでと、その後の小四郎の苦悩の対比が…

親鸞(下) - 五木寛之

中学時代にただただ丸暗記した「浄土宗、法然、念仏」の裏にはこのような世の中の背景と人間ドラマがあったのかと感慨深い気持ちになりました。 もちろんエピソードのほとんどは創作だと思いますが、それでも登場人物たちの想いが深く心に響いてきました。 …

つばき - 山本一力

深川の一膳飯屋「だいこん」を営むつばきの生き生きとした姿が小気味よい物語でした。 ただ、物語の早々で、騙され大きな損失を出したエピソードは、意外とあっさりと片付いてしまって拍子抜け。つばきの恋の話もちょっと強引な感じ。 これは、前作「だいこ…

親鸞(上) - 五木寛之

タイトルからはとても堅苦しい感じを受けていましたが、読み始めてみるとそれもただの杞憂でした。 登場人物たちが皆魅力的に描かれていて、とても読みやすい文章でした。悩み苦しむ若き日の親鸞の姿に、真理に迫ろうとする親鸞の姿に、ぐっと惹かれました。…

楠の実が熟すまで - 諸田玲子

何年も前から読みたい本リストにあった本です。やっと読みました。諸田玲子さんの作品を読むのはこれが最初です。期待に違わぬ出来でしたね。 最初の3つの殺人事件のエピソードが終わり、しばらくしてからも主人公は誰?の状態でしたが、利津が登場し一気に…

忠臣蔵〈下〉 - 森村誠一

上下巻で1400ページとかなりのボリュームでしたが、飽きることなく最後まで楽しめました。小説ですから事実とは異なる部分や脚色も多いと思いますが、これが史実を基にした物語だと思うと、余計に登場人物達に共感を覚えずにはいられません。毛利小平太、高…

忠臣蔵〈上〉 - 森村誠一

なぜ忠臣蔵が語り継がれるのか、なぜいろいろな作品が出続けるのか、そういった興味が歳とともにわいてきたのが、この本に興味を持ったきっかけです。読みたくてもなかなか手に入らなくてあきらめていたのですが、紀伊国屋書店から電子書籍で出ていることを…

始祖鳥記 - 飯嶋 和一

幕府の悪政に庶民が苦しんだ江戸時代天明期。主人公備前屋幸吉は、ただただ純粋に空を飛んでみたいそう思い、試行錯誤でその夢を追いかけます。その行動が悪政批判と受け取られ、役人に捕まるところまでが、第一部。第一部を読み終わり、なんとなく腑に落ち…

風魔(下) - 宮本昌孝

戦国時代を舞台にしたエンターテイメント。下巻でようやく小太郎が活躍する場面が増えてきて、面白さが倍増しました。小太郎と敵対する他の登場人物達との関係が、単なる善と悪という関係ではないところが良いです。最後は、ちょっとベタな終わり方と言えな…

風魔(中) - 宮本昌孝

中巻も登場人物が多い。戦国武将に詳しくない僕にはちょっと辛い。主人公小太郎の出番が少ないのもなんだかなー、という感じ。でも決して面白くないということはなく、十分面白いのです。唐沢玄蕃、湛光風車、曽呂利新左衛門、柳生又右衛門等の人物造形も良…

風魔(上) - 宮本昌孝

戦国時代に活躍した風魔一族の頭領、風魔小太郎を主人公にした物語です。最初のころの時代背景の説明のところで挫折しそうになりましたが、頑張って読み進めて正解でした。主人公の小太郎がとても魅力的に描かれていて、途中からぐいぐいと引き込まれていき…

空の剣 男谷精一郎の孤独 - 高橋三千綱

剣聖と称された男谷精一郎の半生を描いた作品かと思って読み始めましたが、違いました。これは青春時代小説ですね。少年剣士がまだ見ぬ母を訪ね旅をすることで、人間的に成長してゆく物語です。若き主人公が、幾多の試練を乗り越えていく姿が実に良かったで…

カムイの剣 - 矢野 徹

とにかく面白い、その一言に尽きます。幕末から維新の激動の時代を駆け抜けた忍者・次郎を主人公にした冒険歴史小説です。エンターテイメント作品としてストーリー性抜群、そしてスケールも大きく、読み応えのある作品で、夢中になって読み進めました。とに…

のぼうの城 - 和田 竜

評判にたがわずとても楽しく読めました。読んでいて心から楽しいと思える作品です。「のぼう様」の家臣たち登場人物が生き生きと描かれていて、みんな魅力的でした。途中何度か感動で涙がこぼれそうになりました。お薦めです。のぼうの城作者: 和田竜出版社/…

黄金旅風 - 飯嶋 和一

おすすめ文庫王国2008年度版で第1位として挙げられていた作品です。「飯嶋和一にハズレなし」と賞される歴史小説の巨人が描いた、一級の娯楽巨編、とのことだったので、読んでみました。でも、娯楽巨編というよりは、史実をもとにした歴史伝記ものといった趣…

暁の密使 - 北森 鴻

仏教の聖地チベットを目指し、単身、中国を旅した実在の仏僧「能海寛(のうみゆたか)」を主人公とした物語。ミステリー作家と知られる北森鴻氏の作品ということで、ミステリー小説として読めなくはないですが、史実を題材にした冒険歴史小説として読んだほ…

豊臣秀長―ある補佐役の生涯〈下〉- 堺屋太一

この小説の特徴は堺屋太一らしく、経済という視点で戦国時代を見ている点でしょう。戦国時代の大名たちも戦の出費に苦労していたとか、兵農分離がなされていないがための苦労があったということは、あまり語られない部分だと思うのですが、そういったところ…

豊臣秀長―ある補佐役の生涯〈上〉- 堺屋太一

一農民から天下人にのし上がった豊臣秀吉の実の弟「秀長」の生涯を描いた小説の上巻。上巻は、兄秀吉が織田信長に仕えだした頃から、永禄11年(1568年)信長が上洛し、秀吉が京都の政務官になるあたりまでが描かれています。戦国時代の歴史にそれほど詳しく…

諸葛孔明(下) - 陳舜臣

下巻も上巻同様、戦闘シーンは少なめで、孔明の心の動きを中心に描かれています。実際の孔明の心の動きを知ることはもはや不可能ですが、陳瞬臣が描き出した孔明が実物に近いとしたら、本当に一人の人間として尊敬に値する人物だったと思います。自分の野望…

諸葛孔明(上) - 陳舜臣

「三国志」の登場人物のなかでも人気の高い諸葛孔明の一生を描いた小説です。上巻は、孔明が生まれてから、赤壁の戦いまでが描かれていますが、有名な「三顧の礼」によって劉備玄徳に迎えられるまでにかなりのページを割き、その時代背景と彼の成長する過程…

米内光政 - 阿川弘之

僕は戦時中の人物についてはほとんど知らないので、この小説を読んで初めて「米内光政」('よないみつまさ'と読むのだそうです)という人物を知りました。三国同盟・日米開戦に最後まで反対した海軍軍人で、首相、海軍大臣を務め、終戦工作、ポツダム宣言受…

算学奇人伝 - 永井義男

「算学」とは江戸時代に発達した和算のことです。「江戸時代を舞台にした斬新な数学ミステリー」という本の帯の通り、ミステリー好きにも、数学好きにも楽しめる一冊です。ところどころ、図や表で算学問題の問題や解説があるなど、僕が読んだ小説の中ではか…

竜馬がゆく 全8巻 - 司馬遼太郎

幕末維新には、様々な英雄が生まれましたが、坂本竜馬はその中でも一番の英雄なのではないでしょうか。この本を読んで、坂本竜馬という人物がいかに魅力あふれた素晴らしい人物なのかを改めて知ることができました。いままでは、海援隊を作り、薩長連合を実…

三国志 (全13巻) - 北方 謙三

とにかく面白いの一言に尽きます。僕は、他の三国志は読んだことはありませんが、なぜ、三国志がこれほどまでに人気があるのかが分かった気がします。壮大なスケール、魅力的な登場人物、血沸き踊るエピソードの数々、最高のエンターテイメント小説といって…

ワカタケル大王(上)(下) - 黒岩重吾

舞台は、日本の5世紀。多くの反対勢力を滅ぼし、権力闘争の末ついには大王となったワカタケル王(雄略天皇)の生涯を描いた物語です。特に、後半のこの豪族葛城との戦いは圧巻です。この本を読んで驚いたのは、当時の日本と朝鮮半島の国々(百済、伽耶)との…