気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

歌と饒舌の戦記 - 筒井康隆

自炊してiPhoneで再読。 アメリカとソ連のトップが裏取引をしソ連軍が北海道に攻めてくるという現実ではあり得ない設定のお話。そんなだから当然米軍は助けに来ない。日本の自衛隊も役に立たない。日本はゲリラ戦でソ連に対抗するが... 1980年代当時の出来事…

ビヨンド・エジソン - 最相葉月

世界で活躍する12人の日本人科学者の話。免疫学、古生物学、情報科学、物理学、宇宙科学、脳神経科学などなど、取り上げている科学者の分野も幅広く、多数の専門用語が出てきて理解が中途半端な部分も結構ありましたが、第一線で活躍している人たちの話はと…

サラバ! 上 - 西加奈子

主人公・歩(アユム)の幼少期から高校生までが一人称で語られます。父親の赴任先であるエジプトで過ごした時の友達ヤコブとの合言葉「サラバ」が下巻でどう繋がっていくのだろう。それと、イスラム教、コプト教、そして教新興宗教「サトラコウモンサマ」と…

荒神 - 宮部みゆき

宮部みゆきの時代物ファンタジー。 なんの前提知識もなく読み始めたので、まさか人の怨念で造られた化け物(怪獣)が出てくる話とは思いませんでした。 この「荒神」は、話がなかなか進まない「模倣犯」や「孤宿の人」と同じ作者なの?と思えるくらいに、ス…

フォルトゥナの瞳 - 百田尚樹

人に「死」が迫っていることが見えてしまう眼を持った男の物語。とても読みやすく最後まですいすいと読む事ができました。死のせまった他人を助けると、自分の命の削られるなんて、それは苦しすぎます。苦悩する主人公が最後に取った自己犠牲の行動はとても…

未来へ・・・・・・ - 新井素子

はじめて読む新井素子さんの作品。16年前に双子の5歳の長女香苗を事故で失った若菜が、当時の自分と夢で交信しもう一人の娘菜苗とともに、香苗を事故から救い出そうとするタイムパラドックスSF。SFと言っちゃっていいのかちょっと?だけど。 だいたい母親の…

模倣犯 5 - 宮部みゆき

最終巻は一気読みです。 やはり由美子にはああいう最後が運命付けられていたんですね。これ以上の犠牲者が出てこないことを願っていたのに。 それにしても、この事件の幕を引いたのが、警察でもなく有馬義男でもなく、伏兵の前畑滋子だったのには驚きました…

模倣犯 4 - 宮部みゆき

この物語が犯人逮捕劇や謎解き物では無い事に今更ながら気がつきました。 読者が事件の真相を知っているからこそ、事件に巻き込まれた人々の行動や心の動きに、共感したり、悲しんだり、疑問に思ったり、歯がゆく思ったり、といろんな感情が沸き上がって来ま…

マイ国家 - 星新一

ロボット、宇宙、ファンタジー、刑事、恋愛、ビジネスなどなど様々なジャンルの31編ものショートショートが収められています。どれも面白い。 自分を売り込むロボットの話「うるさい相手」、言い訳の天才が出世してゆく「いいわけ幸兵衛」、刑事のまねをして…

非道、行ずべからず - 松井今朝子

江戸時代の歌舞伎の世界を題材にしたミステリー。 歌舞伎にはほとんど縁のない僕ですが、当時の芝居小屋に関わる人々が生き生きと描かれてていとても面白かったです。いわゆる主人公が居ない小説ですが、事件に関わる登場人物達それぞれの心の動きが丁寧に描…

模倣犯 3 - 宮部みゆき

第2巻に続いて、事件を起こした側からの視点で物語が進みます。後半の和明とヒロミの絡みは、実に読み応えがありました。 「誰かに向かって手を広げ、僕がついているよ、一緒なら大丈夫だよと声をかけた瞬間に、 人間は、頼られるに足る存在になるのだ。最初…

模倣犯 2 - 宮部みゆき

うーん、そう来ましたか。 1巻で起こった殺人事件を、今度は犯人側の視点で描いています。とにかく冗長と思えるくらい事件関わる人たちの行動と心の動きを丁寧に詳しく描いています。けど、決して退屈という訳ではなく、ぐいぐいと先を読ませます。単なる犯…

模倣犯 1 - 宮部みゆき

読みたい本リストに長年あった作品です。文庫本5巻という長さに、読むのを先延ばしにしていましたが、やっと重い腰を上げて読み始めました。そして、すぐに物語の中に引き込まれました。 スピード感はありませんが、とても丁寧な描写で登場人物達の心の動き…

平凡 - 角田光代

ある程度の年齢を重ねると「もし、あの時ああしていれば、今は別の人生があったんじゃないか」そんなことを想像してしまう事って、誰でもあるんじゃないでしょうか。そんな男女を主人公にした6つの短編が収められています。 でもその別の人生が果たして自分…

ペテロの葬列 - 宮部みゆき

約1年ぶりに読む宮部みゆきの作品。 「名もなき毒」を飛ばしてこの本を読みました。読んでよかった。ぐいぐいと物語の中に引き込まれました。 マルチ商法、詐欺商法を題材にしたこの作品は、普通の人々にも「悪は伝搬していく」という重いテーマを丁寧に丁寧…

No.6 #9 - あさのあつこ

ついに完結。第一巻を読んだのが 2011/1 ですから、なんと4年かけての読了です。 イヌカシと力河がネズミと紫苑の脱出を待つシーンは読み応えがありました。聖都市「No.6」の最後はちょっとあっけなかったけれど、組織が崩壊する時は意外とそんなものなのか…

日本アパッチ族 - 小松 左京

小松左京の処女長編。 戦後間もない大阪で、鉄を食べる人種が現れるという奇想天外なSF。アパッチ族と名乗る鉄を食べる彼らが独自の自治を主張したことで、日本政府はその殲滅に動き出します。この対立はやがて日本国の存亡に関わる大きな戦いへと発展して行…

風の中のマリア - 百田尚樹

オオスズメバチの働きバチを主人公にした擬人化小説。 働き蜂(ワーカー)である主人公のマリアの一生を通じて、オオスズメバチの驚くべき生態を見事に描いていいます。この本を読むと専門書を読まなくてもオオスズメバチのこと良く知る事ができます。なぜ、…

アイ・アム I am. - 菅浩江

文庫本で150ページほどの短い話ですが、奥が深いです。 舞台は近未来のホスピス病院。ここで介護ロボットとして働くミキが、次第に「自分はいったい何者か」と疑問を抱くようになり、介護を続けながら自分探しをする物語です。 生と死、人間としての尊厳につ…

キサトア - 小路幸也

優しい気持ちになれる大人が読むファンタジー。 朝と夜それぞれ真逆の時間に眠る不思議な双子の姉妹キサとトアの名前が題名になっているけど、主人公は二人の兄のアーチ。 キサとトア二人を題名にするならば、もっと二人の不思議な症状の謎を掘り下げて欲し…

一人っ子同盟 - 重松清

久しぶりに読む重松さんの作品。 昭和40年代の子供達を主人公にした物語。ここに出てくる3人の子供達(ノブ、ハム子、オサム)は、家庭の事情などで、自分の力ではどうにもならない事を抱えており、悩みながら生きています。とにかく真っ直ぐなノブ、素直に…

2014年に読んだ本のまとめ

2014年に読んだ本をまとめてみました。 心に残った本ベスト5です。 1. ふくわらい - 西加奈子 2. 修羅走る 関ヶ原 - 山本兼一 3. トオリヌケ キンシ - 加納朋子 4. 親鸞(上)(下) - 五木寛之 5. 64(ロクヨン) - 横山秀夫 その他、以下の作品も心に残りました…

トオリヌケ キンシ - 加納朋子

久しぶりの加納さんの作品。とにかく良かった。 とても優しく温かい気持ちになれる6つの作品が収められています。自分が若い頃に戻ったようなそんな錯覚を覚えました。日常の中にある小さな奇跡を優しいまなざしで描いた作品は、どれも外れ無し。 特に、共感…

月光のドミナ- 遠藤周作

自炊してiPhoneで再読。 遠藤周作の初期の短編集。11の短編が収められています。どれも人の心の闇や罪深さを題材にしています。それは決して悪に満ち満ちている人ではなく皆普通の弱い人々です。どの話も重く僕の心にのしかかってきました。 その中でも、マ…

離陸 - 絲山秋子

国交省の若手キャリアの主人公が失踪したかつての恋人を探し求めるミステリー? 絲山さんとしては珍しいな、と思って読んでいたら、ちょっとちがいましたね。ミステリーを期待して購入したとしたら、ちょっと期待はずれとなってしまうかもしれません。でもそ…

ジュージュー - よしもとばなな

久しぶりの よしもとばなな さんの作品。 父が経営する小さなステーキ&ハンバーグ店「ジュージュー」を一緒に支えている娘の美津子を中心に繰り広げられる、哀しくも優しい物語。 ここに出てくる登場人物達も、そして僕たちも同じような一日を繰り返し生きて…

生命なき街 - 城山三郎

自炊してiPhoneで再読。 戦後日本の高度成長期におけるサラリーマン達の苦悩・悲哀を描いた短編集。 報われることがないまま幕を閉じる話が多い。逃げ出したくても逃げだすことも難しい厳しい時代に生きたこういった名もなき企業戦士達が日本を支えてきたん…

銀翼のイカロス - 池井戸潤

半沢直樹シリーズ第4弾。 今回は破綻寸前の航空会社が舞台です。この人物のモデルになったのは誰だろうと勝手に想像してしまいました。社会派ドラマとして読むといろいろと物言いがつきそうな感じもしますが、勧善懲悪のエンターテイメントとしては、理屈抜…

やさしい訴え - 小川洋子

カリグラフィー作家とチェンバロ製作者という僕にとっては非日常に生きる人の日常。 そこで織りなす男女の三角関係が残酷でありながらとても静かで悲しくそして美しい。 主要人物三名と一匹(犬)が皆何かを失っているという設定が、喪失感、孤独感や不安定…

ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく - 堀江貴文

証券取引法違反で逮捕され、2年半の刑期を終えたホリエモンがいったいどんなことを書いているのか、意外や意外、実に全うなことが書いてあります。 ゼロの状態の自分に小さな一を足して行く、これの積み重ねが大切だ。これが自分の人生を変えることになる、…