気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

樅の木は残った - 山本周五郎

山本周五郎の代表作。「伊達騒動」といわれる伊達家のお家騒動において、極悪人の烙印を押されていた原田甲斐に対し、新しい解釈を与えており、闘い抜く人間の姿を感動的に描いたとても重厚感のある歴史小説です。
ひとつの大事を成し遂げるために孤独に絶え、家族をも犠牲にせざるを得なかった原田甲斐。封建時代と今ではあまりにも状況が異なりますが、組織の中にいるものとして、どういった思いで彼が「伊達騒動」に立ち向かっていったのかを考えずには入られません。
一個人としての原田甲斐と組織の中で生きる男としての原田甲斐を内面から描き、たんなる英雄物語ではなく、「人間ドラマ」として読むものを感動させます。
静かに静かに(それでいて、読むものを引き付けて話さないエピソードが数々織り込まれています)話が進んでいくのですが、クライマックスはそれまでとは対照的に緊張感とスピード感があり、読むものを圧倒させます。

樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)

樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)