気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

長い長い殺人 - 宮部みゆき

「短編小説」を連ねて行き一つの長編にする、という構成を取っている推理小説です。まあこの部分は宮部みゆきの得意とするところですが、物語の語り手が、なんと「財布」なのです。これはかなり異色ですね(僕は無機物が語り手になっている作品を読んだのは初めてじゃないかな)。ある殺人事件に関係する人々が持っている「財布」が事件について語ってゆくのですが、財布ですから、なにかを見たり話したりすることはできません。基本は、誰かとの会話や音を聞くこと、そして雰囲気を感じること、この2つだけです。小説を書く側としてはかなりのハンディになるはずですが、逆のこの設定を上手く生かしていると思います。
ちょとインパクトに欠けるタイトルですが、中身はさすが宮部みゆきと唸らせる出来だと思います。

長い長い殺人 (光文社文庫)

長い長い殺人 (光文社文庫)