気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

こころ - 夏目漱石

まずは、Bookデータベースからの抜粋

親友を裏切って恋人を得たが、親友が自殺したために罪悪感に苦しみ、自らも死を選ぶ孤独な明治の知識人の内面を描いた作品。鎌倉の海岸で出会った“先生”という主人公の不思議な魅力にとりつかれた学生の眼から間接的に主人公が描かれる前半と、後半の主人公の告白体との対照が効果的で、“我執”の主題を抑制された透明な文体で展開した後期三部作の終局をなす秀作である。

昔読んだ『坊ちゃん』とは随分と趣の違う作品だ。同じ作家の作品とは思えないくらい違う。『坊ちゃん』を発表したのが39歳、『こころ』が47歳。この間に夏目漱石の心も大きく変わったのだろう。僕には、この作品が文学的にどうこうと論じることはできないが、この作品が平成になった今も読み継がれているのは、現代人も抱えているこころの問題を鋭く描いているからだろう。
特に後半の「先生」から「私」に宛てた手紙(遺書)には、人間の持つエゴや弱さ狡猾さ、孤独、苦悩といったものが描かれ、読むものの心を動かす。
先生の友達に対する裏切りは、ほんの少しの勇気やきっかけがあれば回避できたはずなのにとも思うが、そうならないところが、人間のこころの難しいところなんだなと思う。

こころ (新潮文庫)

こころ (新潮文庫)