気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

送り火 - 重松清

架空の私鉄「富士見線」の沿線を舞台にした連作短編集。9つの短編が収められています。ホラーっぽい作品も何篇か収められていて、これと言って、ひとつのテーマを扱ったものではないようです。しいていえば、テーマは「人の抱える悩み」でしょうか。いや、家族、生死、心と心のすれ違いかな?
 
特に僕が気に入ったのは「よーそろ」。電車への飛び込み自殺者が多いある駅の駅員が、駅にあるお地蔵さまの前掛けに小さくホームページへのアドレスを書き入れる。この<ムラさんの世界放浪日記>と駅員と自殺願望者の織り成す心温まる作品が僕の一押し。
表題作の「送り火」もいいですね。幼いころに父を過労死で無くした女性が、夢の中の遊園地で両親と出会い、もう一度親子の関係を見つめなおします。

ただ、「もういくつ寝ると」を最後にも持ってきたのはどうなのかな?

送り火 (文春文庫)

送り火 (文春文庫)