西日の町 - 湯本香樹実
湯本香樹実の作品を読むには、『夏の庭』『ポプラの秋』に続いてこれが3冊目です。彼女の作品を読んで毎回驚かされるのはその文章の上手さです。説明調の文章はほとんどなく、それでいて登場人物の心の動きや情景を上手く表現されています。
時代は昭和30年代、高度成長期のなかで時代に取り残されてしまった斜陽の町(西日の町)が舞台。離婚した母親と僕が暮らすアパートに、家族にさんざん迷惑をかけて家を出て行って行方が分からなかった祖父「てこじい」が転がり込んできたところから、物語は始まります。
この物語は、子供の僕から見た母親と「てこじい」の親子の関係を描いているのですが、決して仲が良いとはいえない親子の複雑な心情を上手く描いています。圧巻はなんといっても、傷心の母親を元気付けるために「てこじい」ある行動をとった場面でしょう。思わず目頭が熱くなりました。
難を言えば、他の2作に比べて難解で作品の雰囲気がちょっと重いというところでしょうか。
PS.
本のページをめくると、文庫本にしては、大きな文字かつ、行間が空いているので、子供向けなのかなと最初は思いましたが、子供には難しすぎるように思います。
- 作者: 湯本香樹実
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/10/07
- メディア: 文庫
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