気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

国語元年 - 井上ひさし

1985年にNHKで放映されたドラマのために書かれた戯曲。
セリフとト書きで構成されているため、物語の中に入ってゆけるかなと心配したが、杞憂でした。実に楽しく一気に読んでしまいました。
明治七年、文部官僚・南郷清之輔は「全国統一話言葉」の制定を命じられます。南郷家は、清之輔は長州の出身で、妻と舅は薩摩。使用人たちは、江戸山の手、江戸下町、米沢、遠野、津軽、山形。居候は、名古屋、京都。そして、会津出身の強盗まで登場します。日本全国のなまりの坩堝の中で、統一話し言葉を作るために奮闘するする姿をユーモラスに描いています。

それぞれのお国なまりのニュアンスを上手く表現するために、話し言葉でルビを振っています。
たとえば、山形弁のセリフを抜粋すると、
「そのつぎに居だのが、人力車引きの弥平さん。」
というセリフに
「ホンツギにエだのが、ズンリギサヒギのヤヘーサ。」
というルビ(カタカナの部分が振ってあります。
これがとても効果的で、山形弁が頭のなかで再現されます。

井上ひさしの日本語を愛する気持ちが伝わってくる作品です。

国語元年 (中公文庫)

国語元年 (中公文庫)