気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

誰か - Somebody - 宮部みゆき

財閥会長の個人運転手・梶田が自転車に轢き逃げされて命を落とした。梶田の娘たちの依頼で、事件の真相を追いかけるうちに意外な方向に展開してゆく..

いきなりですが、「誰か」の文庫本の解説から引用します。

「ハリウッド映画のような、起伏にとんだ展開が準備されているわけでもない。にもかかわらず物語に対する読者の関心は決して減じることがないのである。」

まさにその通りですね。そして、最後の最後までいったいどういう結論が待っているのかが読めないんです。それは僕の想像力のなさかもしれませんが...

彼女の作品はよく、「ハートウォーミングな」という形容が用いられたりしますが、いやいや多くの作品は、小市民の私たちの中にも醜い一面があることを、毒を持っていることを、運命に翻弄されてしまう弱い存在であることをえぐり出す、そういった作品が多いように思います。そしてそれに対する作者の回答はあえて語らず、読者にゆだねることで、物語を奥深くしているように感じます。
そういう意味で、この「誰か」は「火車」に通じるものがありますね。ただ、「火車」ほどの衝撃はありませんでした。

誰か―Somebody (文春文庫)

誰か―Somebody (文春文庫)