気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

生物と無生物のあいだ

話題になった本だけあって面白いです。
前半は、生命の謎に挑んだ科学者たちの熱きドラマがあります。DNAの発見をめぐる科学者たちの苦労と激しい競争が鮮やかに描かれていて、上質なミステリーを読むようなそんな感覚で読み進めることができます。
そして後半は、福岡氏自身の研究の歩みを中心に、生物と無生物とを区別する本質は何かについて説明しています。
特に興味深かったのは、p229のGP2というタンパク質の膜形成のメカニズムの仮説。まさにエクセレント! すごいすごい凄すぎです。

そして、もうひとつ興味をそそられたが、動的平衡の説明。
ちょと抜粋させてもらいます。

秩序は守られるために絶え間なく壊さなければならない。
なんていう含蓄のある言葉なんでしょうか。

そして著者は続けます。
やがては崩壊する構成成分をあえて先回りして分解し、このような乱雑さが蓄積する速度よりも早く、常に再構築を行なうことができれば、結果的にその仕組みは、増大するエントロピーを系の外部に捨てていることになる。
つまり、エントロピー増大の法則に抗う唯一の方法は、システムの耐久性と構造を強化することではなく、むしろその仕組み自体を流れの中に置くことなのである。つまり流れこそは生命の内部に必然的に発生するエントロピー排出する機能を担っていることになるのだ。
この考えは、ソフトウェアにも通ずるものがあります。

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)