気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

口笛をふく時 - 遠藤周作

最近は昔読んだ本を読み返すことが多いですが、これもそのうちの一冊。
再読には当たらないくらい、内容はすっかり忘れていました。
この作品は、戦中派の父親と戦後生まれの息子の間の断絶がテーマの一つ。

今は、戦後生まれのおじいちゃんもいる時代なので、時代感覚が合わない部分もありますが、過去(父親の青春時代)と、現在(医者である息子の病院内での話)が交互に語られ、ラストで一人の女性が二つのお話を結びつけるという展開で読者をひきつけます。
この物語では、戦中派の父親は弱者として、戦後派の息子は強者として描かれています。息子は病院内の出世争いに勝ち残り、意中の女性も手に入れることができるのですが、いったいどちらが人生の成功者なのか(父親なのか息子なのか)を考え、複雑な想いが胸をよぎりました。

ずしりと心に残ると共に、切ない青春小説の一面もあわせ持った作品でです。
残念ながら、絶版になっているようですが、弱者に対して優しい目を向ける遠藤周作らしい作品だと思います。

口笛をふく時 (講談社文庫 え 1-19)

口笛をふく時 (講談社文庫 え 1-19)