気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

石の血脈 - 半村良

半村良の処女作でもあり、「伝奇ロマン」や「伝奇SF小説」と呼ばれるジャンルを開拓したとされる記念碑的作品です。久しぶりに読み直しました。
アトランティスの謎、巨石信仰、犬神信仰、狼男、吸血鬼伝説などなど伝記ロマンの題材を広範囲に融合させてあり、半村良の作り出す嘘にまんまと乗せられてしまいます。
でも、かなり濃厚な性描写が多く、すごくエロティックです。話の展開上、必然性を持っていると言えば言えますが、それが強烈に印象に残ってしまう後半部分がちと気になります。

もうひとつ気になったのが、「特権階級 VS.一般市民」あるいは、「権力 VS.反権力」という対立軸において、主人公たちがみんな特権階級側に取り込まれてしまうこと。
「人間なんてそんなもんだよな」とは思うものの、小説の中では、それに抵抗する正義をもっと全面に出してほしかったと思います。

と、注文を出してしまいましたが、40年近く前に書かれた作品でありながら、色あせることにのないこの作品は、スケールも大きく、かなりのパワーを持ったエンターテイメント作品だと思います。

石の血脈 (集英社文庫)

石の血脈 (集英社文庫)