気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

新釈 遠野物語 - 井上ひさし

柳田国男の名著『遠野物語』の世界に挑戦する、井上ひさしの現代の怪異譚9話。ということですが、僕は『遠野物語』を読んだことがないので、比較することはできません。でもとても面白かったです。
遠野の近くに住む国立療養所でアルバイトをしている青年が、山の中に住むトランペットを吹く犬伏老人から聞かせてもらった不思議な話を書き綴ったものという構成になっています。話が佳境にはいると、老人はいつも煙草を吸ったりお茶を飲んだりと、話をじらすのですが、この本を読んでいる読者もじらすことになり、とても効果的です。
9つの話どれをとっても面白いのですが、特に面白いと思ったのが、最初の山男から逃げる「鍋の中」、河童の少年との交流を描いた「川上の家」、話売りから買った話を信じなかったために起こる悲劇を描いた「笛吹峠の話売り」、そして、最後の「狐穴」でしょうか。「狐穴」でのどんでん返しで、再度犬伏老人との出会いのページを再度読み直したのは僕だけではないと思います。

新釈 遠野物語 (新潮文庫)

新釈 遠野物語 (新潮文庫)