気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

ことばと文化 - 鈴木孝夫

外国語を知ることは日本語そして日本文化を知ることにもなる、そう教えてくれます。そして、言葉と文化の深い深いつながりを教えてくれます。
たとえば、水という単語ひとつとっても、日本語は、湯と区別していますが、英語では、この区別はありません。マレー語ではなんと、氷との区別もないのだそうです。われわれ日本人には当たり前のことが、外国語ではそうなっていなません。またその逆もしかりですね。
唇ということばも、そのまま英語のLipには対応しないのだそうで、これは大きな驚きでした。唇の上の皮膚の部分もLipなんだそうです。だから、Lipに髭が生えるという表現が英語では成り立つんだとか。
鼻では、「鼻が高い、低い」という表現が英語にはないし、「象の鼻」は、Noseとは言わないとか、英語の弱い僕には、驚きの連続でした。
人間の最も身近な体の部位でも大きな差があるわけですから、それ以外の単語は推して図るべしですね。
このような言葉の違いによる考察から発展し、最後は、ことばが日本人の文化や行動様式に大きく関係してくることまでを、とてもわかりやすく解説しています。
特に最後の章の人称代名詞の話はとても興味深い内容でした。妻が夫にむかって「パパ」と呼びかけるおかしな呼び方は、日本語特有なのだそうですが、これを見事に考察し、日本人の対人との接し方や行動様式との関連性を導き出しています。
4章の言葉の意味を言葉で説明することが如何に困難かを示していて、これも面白かったです。
1973年に第一刷が発行されてから、これまでロングセラーを続けている理由がわかります。

ことばと文化 (岩波新書)

ことばと文化 (岩波新書)