気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

黄金旅風 - 飯嶋 和一

おすすめ文庫王国2008年度版で第1位として挙げられていた作品です。「飯嶋和一にハズレなし」と賞される歴史小説の巨人が描いた、一級の娯楽巨編、とのことだったので、読んでみました。
でも、娯楽巨編というよりは、史実をもとにした歴史伝記ものといった趣の本でした。たぶん日本人のほとんどが知らないであろう江戸時代初期の長崎の代官であり、朱印船貿易家であった末次平左衛門の半生を描いています。
はじめは海洋冒険小説なのかと思って読み始めましたが、長崎の市民側にいる末次平左衛門と権力をほしいままにする長崎奉行の竹中重義との対立が中心です。主人公、末次平左衛門がとても魅力ある人物として描かれており、歴史の渦の中で奮闘する姿は深い共感を覚えます。
また、当時、どのように鎖国政策へ切り替わっていったのか、キリシタン弾圧がどのようなものだったのか、なども丹念に描かれていて、とても興味深いものがありました。

ただ、文庫本で600ページというのは、そのメインストーリーを考えると長すぎのような気がします。いろんなエピソードを盛り込みすぎたかなと思います。末次平左衛門一人に絞り物語を展開して、平左衛門にもっと感情移入できるようなものにして欲しかったですね。
後半に出てくる鋳造師・新三郎のエピソードが、本筋の話よりも面白いというのも、ちょっと残念な点です。

黄金旅風 (小学館文庫)

黄金旅風 (小学館文庫)