気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

侍 - 遠藤周作

江戸時代初期、伊達政宗の命によりメキシコ、ヨーロッパに渡航した支倉常長(はせくら つねなが)がモデルとなった小説です。
いわゆる「慶長遺欧使節」ですね。歴史教科書ではなかなか知りえない時代背景と壮絶な人間ドラマがここにはありました。

小説では、身分の低い「侍」長谷倉六右衛門と、一緒に渡航した野心家の宣教師ベラスコの対照的な二人の心の内の声が大半を占めており、
それがこの小説を重厚なものにしているように思います。

長谷倉もべラスコも時代の流れに翻弄され消え去ってゆくのですが、そんな彼らの人生を思うと、なんとも言葉には出せない思いで心の中がいっぱいになってしまいます。
僕は無宗教の人間ですが、この本を読むと「力を尽くしても及ばぬことがある」そういった人生においての信仰について深く考えさせられます。

とても良い作品だと思います。

侍 (新潮文庫)

侍 (新潮文庫)