気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

どぶどろ - 半村 良

冒頭に7編の短編があって、それらの物語が、最後の中編「どぶどろ」の前章となっているという変わった構成。
7つの短編は、江戸時代の一般庶民の悲哀を描いたものですが、どこかほっとさせる内容になっていて、それぞれ独立した作品としても十分に読み応えがあります。
そして最後の「どぶどろ」は、捕り物調風の話になり、緊迫感がぐっと高まり、読者を引き付けます。
巨大な権力者たちの前で為す術もなく捻りつぶされる主人公・平吉。読者の期待を裏切るラストに思わずうなり声をあげてしまいました。

宮部みゆきの『ぼんくら』は、この『どぶどろ』へのオマージュとして書かれたということであり、宮部みゆきの時代物が好きなかたは、是非読んでみることをお薦めします。

どぶどろ (扶桑社文庫―昭和ミステリ秘宝)

どぶどろ (扶桑社文庫―昭和ミステリ秘宝)