気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

猫を抱いて像と泳ぐ - 小川洋子

なんと言ったら良いのか語彙の少ない僕には言い表せませんが、独特の雰囲気をもったこの作品に引き込まれました。

バスを改造して暮らしているチェス好きのマスターと出会い、チェス教わり、自分の居場所を見つけることができたリトル・アリョーヒンの数奇な人生を綴った静かで美しく優しく、そしてちょっと哀しい物語です。
チェスのことは駒の動かし方を知っている程度だけれど、チェスの奥深さ、美しさが伝わってきます。
相手を打ち負かすためにチェスをするのではなく、相手と調和し、美しく詩のような棋譜を紡ぎだするリトル・アリョーヒンの姿は、とても魅力的でした。

世間一般の成功とはかけ離れているけれど、8×8の小さな盤上で無限の旅を続けた彼は幸せだったのだろうと思います。

読み終えるのが惜しいと思う小説はそれほど無いですが、これはまさしくその一冊。本当に素晴らしい作品に出会えたことに感謝です。

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)