薬指の標本 - 小川洋子
収録されている「薬指の標本」「六角形の小部屋」共に小川洋子さんらしい実に不思議な雰囲気を持った作品です。二作品とも結末があるようで無い、続きを想像してしまうそんな終わり方もいいなーと思っています。
「薬指の標本」は、物や体の一部への異常な執着というんでしょうか、それが嫌らしくなく静かに描かれています。よくよく考えるととても怖い話なんだけど、なぜかこの雰囲気が好き。ただ、「和文タイプ」の活字盤を一晩かけて拾うシーンはかなり異常でなぜかエロいと思う。女性の気持ちがわかったようで結局はわからない。
「六角形の小部屋」は、ひとりっきりで誰も聞かれる事も無く、何でも語ることのできる小さな部屋の話。自分の過去の記憶や現在の心と向き合い整理する場所なのかな。結論が出る出ないに関わらず、人は皆、そんな時間と場所が必要なのかもしれない。