気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

龍は眠る - 宮部みゆき

なぜ、宮部みゆきの作品にこうも惹かれてしまうのでしょうか。きっと、それは、「こころ」を描く作家だからだと思います。うまく生きてゆくことができない人間がもつ悲しみ、苦しみ、悩み、迷い、そういったものを描かせたら天下一品ですね。
この作品も「超能力者」を題材にしたお話ですが、ヒーローものではなく、人の心が読めるという特殊な能力を持ったがために苦悩する高校生が、ある事件と立ち向かうお話です。
「信じてくれなくてもいい。でもね、もしも高坂さんが僕だったら、僕みたいなガキで、まだ世間のことなんかよくわからないのに、見たくもないし聞きたくもないものを知る力を持って生まれてきたらどうする。見えるんだよ?聞こえるんだよ? そしたら、自分の出来る限りのことをして、見たこと、聞いたことをどうにかしなきゃって、思わない?」
主人公、稲村慎司のこのせりふを聞いたら、もう心のそこから応援せずにはいられなくなります。

龍は眠る (新潮文庫)

龍は眠る (新潮文庫)