気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

犠牲(サクリファイス)―わが息子・脳死の11日

自分の息子の死(心の病→自殺→脳死)という、とても冷静にはなれないテーマをノンフィクション作家ならではの冷静な目で描いています。柳田氏があとがきで書いているように、激しい挫折感と敗北感で打ちのめされ、作家活動そのものを続けることが困難な状態でありながら、書かなければならなかった作家としての業というものを感じます。自分の息子が確かに生きていた、という証を残したいという思いもあったのでしょう。
この本は色々なことを考えさせてくれます。「神経症のこと」「家族のこと」「息子との関わり方」「人間の死について」「医療のこと」「臓器提供のこと」などなど。ちょっと重いテーマですが、お勧めの本です。
この本の本題からは離れてしまいますが、この本でとても心に残ったのは、病院関係者の心のこもったケアのことです。こういった素晴らしい医師、看護婦(あえて看護婦と書かせてもらいます)めぐり合えたことは、柳田邦男氏にとっても洋二郎氏にとってもとても幸せなことだったと思います。

犠牲(サクリファイス)―わが息子・脳死の11日 (文春文庫)

犠牲(サクリファイス)―わが息子・脳死の11日 (文春文庫)