夏の庭―The Friends - 湯本香樹実
『ポプラの秋』がよかったので、彼女の処女作『夏の庭―The Friends』を読んでみました。期待以上の出来で大満足です。十数カ国で翻訳出版されているのも頷けます。
人が死ぬところ見てみたいという好奇心から、同じ町に住む老人を見張ることになった、小学6年生の仲良し3人組。
おじいさんは、はじめは見張られていることに怒りながらも、いつしか子供たちが来るのを楽しみにするようになります。一人暮らしで何の楽しみもなかった老人の生活に活気が戻り人生最後の輝きを放ちます。
子供たちも「死ぬのを見張る」という本来の目的?を忘れ、おじいさんに一種の友情のようなものを感じるようになります。子供たちはおじいさんとの交流を通じ、学び成長して行きます。
ジャンルは児童文学ということになっていますが、これは大人が読んでも十分に楽しめる、そして「泣ける」小説です。
文章もとても良いですね。ちょっと引用させてもらいますが
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「あっ」山下が、空を見上げた。「雨だ」
乾いた白っぽい土の上に、黒いしみがいくつもできていく。やがてそれは庭全体に広がり、大粒の雨の降る音がぼくらの耳をおおった。湿った土と蚊取り線香の匂いが、強く立ち上がる。
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情景とともに音と匂いまでもが感じさせるこの一文に感服しました。
またいつか読んでみたい本ですね。
- 作者: 湯本香樹実
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1994/03/01
- メディア: 文庫
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