気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉

ノーベル物理学賞を受賞したリチャード・P・ファインマン氏の自伝的エッセイの下巻です。
下巻も上巻同様、さまざまなエピソードが語られています。そろばんマンとの対決とか、リオのカーニバルでのフリジデイラ(フライパン型のパーカッション楽器)の演奏をしたり、ボンゴドラムでバレエの国際コンクールの伴奏をしたり、絵画への挑戦し、個展を開いたり、マヤ文明の古代文書の解読に熱中したりと、どのエピソードも、ユーモアたっぷりに語られており、とても面白く読むことができました。
これが本当にノーベル物理学賞を受賞した大学教授の経験談だとは、にわかには信じがたいのですが、何事にも興味を持つその旺盛な好奇心と、それを実践してみる行動力が、偉大な成果をあげた原動力なのだな、というのが読み終わった感想です。

僕が興味を引いたのは、最初のエピソードである難しい暗算の話や、ブラジルでの科学教育に関する批判、科学教科書選定委員での活躍?、でしょうか。
特にブラジルでの科学教育の問題点の指摘は、まさに自分のことのように感じられ耳の痛いものでした。うわべだけの知識で、それを現実世界と結びつけることいができない教育や試験にパスするだけの知識というものがいかに無意味なものか、学ぶということの本質は何かを改めて考えさせられました。日本の教育にもそのまま当てはめることができそうです。

最後の章は「カーゴ・カルト・サイエンス」という題で、大学の卒業式式辞です。これは、最後を締めくくる本当に良いお話だと思います。「科学的良心」について語っていますが、研究者のみならず、一般の人たちの物事に対する姿勢にも通じるものがあります。

その一部を引用します。

その「もの」とはいったい何かと言えば、それは一種の科学的良心(または潔癖さ)、すなわち徹底的な正直さともいうべき科学的な考え方の根本原理、言うなれば何ものをもいとわず「誠意を尽くす」姿勢です。

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉 (岩波現代文庫)

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉 (岩波現代文庫)