気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

壬生義士伝 - 浅田次郎

心を揺さぶられる作品です。
本を読んで目頭が熱くなることはあっても、涙を流すことはめったにない僕ですが、この作品では幾度と無く涙が頬を伝いました。実にいい本です。最近読んだ中ではNo1の作品ですね。

慶応4年、大阪の盛岡南部藩蔵屋敷に、満身創痍の侍(南部藩を脱藩し、新撰組に入隊した「吉村貫一郎」)がただ一人でたどりついたところから物語りは始まります。
普通の小説のように三人称で始まるのですが、途中から、主人公吉村貫一郎の独白となり、そして、貫一郎を知る人たち(斉藤一など)の回想へと移っていきます。
こういった構成の小説は初めて読んだ気がします。
少しづつ少しづつ、貫一郎の人となりが明らかになっていく話の展開は実に巧いです。知らず知らずのうちに、貫一郎に強く惹かれる自分を発見しました。同じ出来事を別の人の回想という形で、違う視点で描くというのも、とても効果的です。そして朴訥とした南部弁のセリフが、この作品をとても味わい深いものにしています。

壬生義士伝 上 (文春文庫 あ 39-2)

壬生義士伝 上 (文春文庫 あ 39-2)