ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか
この本は、ウェブ時代の新しい働き方を提示している。しかし、「プロ野球選手になるには」、「プロ将士になるには」、「プロの演奏家になるには」、と同じように、ここで提示している生き方はそう簡単な道ではない。一般人には関係ないという意見も聞こえてきそうな提案である。
そして、上に挙げた3つの職業は、若い頃にその才能のあるなしを判断でき、才能が無いと分かった時点でそれを断念し(たぶん、ものすごい数の人たちが断念していったことだろう)、他の道を探す時間が十分に残されているのに対し、この本を読むであろう多くの読者には、その時間があまり残されていないであろうという点が、現時点ではこの新しい生き方を難しくしていると感じる。
また、プロ野球選手やプロ将士と同様、その道で食べていける人の数はかなり限られてしまうだろう。IT専門化が全員オープンソースで食っていけるはずもないし、「好き」だけを貫いて生きることなんて出来っこない。
しかし、ここで提案している生き方("高速道路"であれ"けものみち"であれ)は、若者に希望や目標、夢を与えるものであることには異論はない。イチローや松坂大輔を目指し努力する若者がいるように、「まつもとひろゆき」を目指す若いソフトウェア開発者が沢山出てきて欲しいと思う。
本書に書かれているように、ウェブ革命はその後押しをしてくれる。それをどう生かすかは私たちしだいだ。「時代の大きな変わり目」にいる私たちは、そのことを意識し、「古い価値観」に過剰反応せずに、新しい可能性にチャレンジすることが必要だろう。
ただ、気になるのは、ソフトウェア開発者の地位が低い日本において「まつもとひろゆき」が例外中の例外なのか、それとも「野茂英雄」のようなパイオニアなのかという点だ。後者であってほしいと願っているが、その結論はもう少し待たないといけないだろう。
いずれにせよ、古い世代の僕がこの新しい世界でメジャープレーヤーになることは難しいが、「もうひとつの地球」が今後どうなってゆくのかは、しっかりと見守り、その恵みを享受していこうと思う。
ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)
- 作者: 梅田望夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/11/06
- メディア: 新書
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