気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

人とロボットの秘密

表紙から受ける印象よりも、はるかにまじめな内容の本です。
確かに、ロボットアニメを引き合いに出し、現在のロボット研究を考察していますが、松原仁(公立はこだて未来大学)、石黒浩(大阪大学)、中田亨(デジタルヒューマン研究センター)、前野隆司(慶應義塾大学)、吉田和夫(慶應義塾大学)、高西淳夫(早稲田大学)らの、日本を代表するロボット工学者らの最新研究成果を踏まえたものとなっています。

ロボットアニメに特別の思い入れのない僕(マジンガーZもガンダムも見たことないです)ですが、ロボットは現代日本人の僕には気になる存在であることは間違いありません。2001年に刊行された『未来のアトム』(ヒューマノイド研究に関する最新動向や、脳科学をはじめとするさまざまな現代科学の知見を紹介している600ページを超える大作)という本も、本屋で見かけ衝動買いしてしまったくらいですから。

『未来のアトム』と『人とロボットの秘密』はページ数はかなりの違いがありますが、伝えようとしていること(ロボットを作るということは、人間の本質に迫ることなのだ)は、非常に似ていると思います。

ちなみに『未来のアトム』では、知能は脳の中にある(つまり、知能はハードウェアから分離して取り出せる独立したソフトウェアのようなもの)という固定概念に対して疑問を投げかけていますが、約8年後に出た『人とロボットの秘密』では、知能には脳と体の2つが必要だとほぼ結論づけています。研究の進歩がこの8年間であったということでしょうか。

プログラマーのはしくれの僕から見た場合、今の技術の延長では、知能を人工的に作るのは到底不可能なように思えますが、本書に出てくる研究成果が、実は何十年、何百年後からみたときに、突破口になっていたなんてことがあれば、素晴らしいなー、そんな感想を持ちながら本書を読み終えました。

人とロボットの秘密

人とロボットの秘密