天国までの百マイル - 浅田次郎
かつては、仕事で億単位の金を動かしていた元会社経営者の主人公。しかし、バブルが弾け、会社は倒産。自己破産し、妻にも見放され、子どもへの養育費を払うために日々の生活にも困る有様。そんな中年の主人公が、心臓病を患う母の命を救うため、天才的外科医のいる千葉の病院までワゴン車に母親を乗せ、100マイルを走り抜ける・・・
主人公の病の母を思う気持ちがひしひしとこちらに伝わってきて、胸が締め付けられました。単純なハッピーエンドではありませんが、読み終わって「ああ、よかったなー」としみじみ思うことのできる作品でした。
いろんな人との関わりの中にこそ、幸せがあるんだな、ということを改めて気付かせてくれます。
ところで、この小説には、情の薄い兄姉が登場します。兄たちは、裕福だけど薄情、主人公はお金は無いけど情に厚いという、いかにもステレオタイプ的な人物設定ですが、ここに苦労して子供たちを育て上げた母親からの視点を加えることで、この小説を厚みのあるものに仕立て上げているように思います。
それと、主人公を思うホステス・マリの存在。無償の愛の力ってすごいです。
- 作者: 浅田次郎
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2000/10
- メディア: 文庫
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