気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

人民は弱し 官吏は強し

大正時代には全盛期を迎えた星製薬会社の創業者であり、ショートショートの第一人者である星新一の父親である星一(はじめ)氏の伝記小説です。

ずいぶん前に一度読んだことがありますが、最相葉月の『星新一 1001話をつくった人』を読んで、再度読んでみたくなり、手に取りました。

これを読んで感じるのは、「こんな理不尽なことがあって良いのか!」という一言に尽きます。自分たちの立場を利用し、陰湿で執拗に星氏をいじめぬくそのやり方は、本当にひどすぎます。人間の醜さ残虐さ恐ろしさというものを改めて感じさせられました。
不撓不屈』(高杉良著)では、飯塚毅氏は、巨大な国家権力に勝利することができましたが、星製薬の星一氏は、残念ながら、国家権力につぶされ、星製薬もなくなってしまいました。星氏の清廉潔白な生き方が唯一の救いです。
それにしても、こういった事件があり星製薬を継ぐことができなかったために、星新一という国民的作家が誕生したというのは、皮肉なものです。

人民は弱し 官吏は強し (新潮文庫)

人民は弱し 官吏は強し (新潮文庫)