気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

声の網 - 星新一

ずいぶん前に読んだ本を再読しました。
現代のインターネット社会が持つ問題点を40年も前に予見していたということで、数年前に復刊され、評判になっていた本です。
内容は、電話網が高度に発達した時代、すべての情報が電話を介し、背後にあるコンピュータで管理されています。そんな時代、あるマンションに店を構える民芸品店に、「お知らせする。まもなく、そちらの店に強盗が入る…」と強盗予告の電話が入ります。そしてその通りの出来事が。
この事件をきっかけに、電話を使った不思議な事件が次々とおこり、徐々にその正体が明らかにされていきます。

12編の短編連作の形式でかかれたこの小説は、星新一らしく感情をおさえた無駄のない文章で書かれていますが、個人情報の漏えいと情報操作の怖さがよく描かれていると思います。
4章の途中、登場人物が「人の秘密」についての考察する個所がありますが、とても興味深いものがありました。
あまり書くとネタばれになるので、やめておきますが、パーソナルコンピュータやインターネットや携帯電話なんて想像もつかなかった時代に、このような小説を書いた星新一の先見の明に驚かされます。

声の網 (角川文庫)

声の網 (角川文庫)