気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

海と毒薬 - 遠藤周作

太平洋戦争末期に実際にあった九州帝国大学医学部で起こった事件がモチーフになっているとのことです。
外人捕虜を生きたまま解剖するという実験に参加することになってしまった医学生の勝呂、戸田、看護婦の上田のそれぞれの視点でこの事件を描いています。
特に、自らの意思でこの実験に参加する良心の麻痺した戸田と断ることも出来たのに流れに逆らえず実験に参加した意志の弱い勝呂が対照的に描かれています。

この作品を読んでいると、罪の意識にさいなまれる勝呂も、罪の意識を感じない戸田も、僕の中に存在しているということを強く感じ、読み終わった後、深く考えさせられる作品です。

何もしない、何も決断しない、それも罪。弱い人間ならばだれもが背負うであろうこの罪。どうこの罪と向き合って生きてゆけば良いのか...

海と毒薬 (角川文庫)

海と毒薬 (角川文庫)