気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

袋小路の男 - 絲山秋子

「袋小路の男」「小田切孝の言い分」「アーリオ オーリオ」の3つの短編が収められています。
表題作「袋小路の男」は、川端康成文学賞作品で、高校時代から12年間、指一本触れないまま、一人の男性を想い続けた物語。
と書くと、切なく苦しく哀しいというイメージがわきますが、それともちょっと違います。
微妙な距離感の男女の関係が不思議な雰囲気をもたらしています。。
男から見ると、主人公の女性は実に自然体でかわいらしい。なぜ、小田切は彼女を放っておくのかなんて思ってしまうのですが...

「アーリオ オーリオ」も良かったですね。
清掃工場で働く中年男とその姪の交流を描いた作品。淡い恋心を持つ姪の側からではなく、男の側から描いた点が、この作品のすばらしい点かな。
姪の気持ちは彼女からの「手紙」からしか分からないのですが、それが僕にピュアな気持ちを思い出させてくれました。

絲山秋子の作品は、こころ静かに穏やかな気持ちで読みたいですね。

袋小路の男 (講談社文庫)

袋小路の男 (講談社文庫)