気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

王妃マリー・アントワネット(下巻) - 遠藤周作

バスティーユ牢獄襲撃事件 - ヴァレンヌ逃亡事件 - タンプル塔の幽閉 - ルイ16世の死刑。そして、マリーアントワネットの死と、下巻は一気に不幸の底に転落してゆくマリーアントワネットの姿が描かれています。
上巻と異なり、苛酷な運命の中、王妃としての気品と優雅さとを失わずに死を迎えようとするマリー・アントワネットの姿に心打たれます。そして、彼女を何とか助け出そうとするフェルセンの愛とその執念にも。
また、この物語のもう一方の主人公である、マルグリッド、アリエスという女性を通して語られるフランス革命は、力を持った人間の醜さ、集団の恐ろしさを伝えていて、この物語を深みのあるものにしています。

とにかく、下巻は一気読みでした。
特に、ヴァレンヌ逃亡事件のところは、結局は失敗してしまうんだと判っていても、「なんとか逃げ延びてほしい」という強い思いが湧きおこり、手に汗握りながら読み進めました。
それだけ、読者を引き付ける作品だと思います。

読み終わった後も、何とも遣り切れない気持ちを後後まで引き摺ってしまう作品ですが、それはこの物語の奥深さ故だと思います。
面白いという表現が適切だとは思いませんが、今年読んだ中では、最高の作品だと思います。

王妃マリー・アントワネット〈下〉 (新潮文庫)

王妃マリー・アントワネット〈下〉 (新潮文庫)