気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

オリンピックの身代金(下) - 奥田英朗

10月10日の東京オリンピック開会式にむかって、複数の時間軸が徐々に一つに重なりあいクライマックスになる構成は緊張感があり見事だと思います。
主人公の東大院生の島崎とそれを追いかける刑事の落合、それに島崎の同級生で警察官僚の息子でTVマンの須賀、この3者の視点で物語が進んでいきます。

歴史的事実からしてラストがどうなるかはある程度想像できてしまうのですが、それでも手に汗握る展開にのめり込んでしまいました。
島崎と行動をともにした中年のスリの村田の描き方も実によかったです。二人が起こした事件は犯罪とは分かりつつもなんとか逃げ延びてほしいと応援している自分がいました。
昭和の高度成長期にあった光と陰を浮き彫りにした社会派小説でした。