気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

おっちょこちょ医 - なだいなだ

なだいなだ氏の訃報に接し、昔読んだ本を自炊してiPhoneで再読。

医者のいない小さな街に、おっちょこちょいの若い医者・ディストレ先生がやってきて、いろいろな騒動を巻き起こす児童文学。

前半はとてもユーモラスで微笑ましいエピソードが続きます。ディストレ先生のおっちょこちょいが幸いして健康診断や健康保険、インフォームド・コンセントが自然発生的に確立してゆくエピソードは、押し付けがましい所がなく楽しめました。先生の助手となった幼い二人(ヤンとダン)が成長してゆく過程も良かった。

後半は、隣の国からの軍隊が侵攻してきて、一転して緊迫した雰囲気になりますが、戦争体験したが故にどうしても子供たちに伝えたかったことなのだろうと思います。

ディストレ先生が助手のヤンに最後に言う言葉が心をうちます。「きみが医者の資格をもっていなくとも、彼をすくうだけの力をもっているとしたら、にせ医者と呼ばれることをおそれて、その人間をほうりだすことのほうが、正しいことだとでもいうのかね。… ためらうなよ。人をすくって罪になるなら、罪をおかしなさい。」

おっちょこちょ医 (集英社文庫 60-C)

おっちょこちょ医 (集英社文庫 60-C)