気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

壁 - 安部公房

若い頃読んだ本を自炊してiPhoneで再読。

人間の孤独と不条理を描いたシュールな短編集。名前を失った男の話(S・カルマ氏の犯罪)、影を喰われて透明になった男の話(バベルの塔の狸)、人々が液状化してしまう話(洪水)など、奇妙きてれつな話だけれど、どれもユーモアと寓話性をもっていてとても興味深い。「魔法のチョーク」も良かった。
これらの作品が今から60年も前に書かれていることは驚きである。

ここから何を読み取るのか難しい問題だけれど、最後まで読んでしまう力がある。この柔軟な発想力の凄さに感心。たまにはこういった前衛的でシュールな作品もよい。

 

壁 (新潮文庫)

壁 (新潮文庫)