気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

光圀伝 - 冲方丁

水戸光圀というと、TVドラマの黄門様のイメージが強いですが、ここには新しい光圀像がありました。武力で制圧する政治から文治政治へと移り変わろうとする中で、時代を力強く生きた光圀の一生が描かれています。

読耕斎、紋太夫、佐々、泰姫、左近など脇役達も魅力的でした。安井算哲も登場し、『天地明察』ともリンクしているのも憎い演出です。

ハードカバーで751ページという超分厚い本ですが、とにかく面白くページをめくる手が止まらない作品でした。

光圀が手がけた『大日本史』を編纂という文化事業が物語の重要な位置を占めており、本書を閉じた時には、「人の想いが連綿と新しい世代へと受け継がれてゆくことで歴史が成り立っており、名もなき人々の人生もその中にあるのだ」という光圀の言葉をしみじみと味わいました。

天地明察』をしのぐ傑作だと思います。ただ、「うざい」という言葉が使われていた点は、マイナスですね。

 

光圀伝

光圀伝