気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

幸福な食卓 - 瀬尾まいこ

とても読みやすい文章で、すいすいとページをめくることができました。

中学生の主人公佐和子の母は家を出て別居中。父は「父親を辞めた!」と宣言してしまう、でも家族崩壊とも違う、ちょっと変わった形態の家族の物語。 兄は天才少年と謳われていながら、大学にいかず野菜を作る仕事をしている。
なぜ、こうのような形になったのかは初めは明かされませんが、徐々にその過去が明かされていきます。とても重いテーマだと思うのですが、兄弟の明るさがそれを消してくれます。

後半を迎えどんな微笑ましい結末がまっているのかな、なんて想像していた矢先に、思いも寄らぬ展開があり、「えっ、まさか!」と思いましたが、 人生なんて、なんの前兆もなく事件が起きることも多いわけで、 こういった展開は、実はものすごいリアリティなんだ、と思います。

ラストはすこし納得がいかない部分がありますが、「ひとりじゃない、みんな誰かに守られている、繋がっている」そう実感した主人公佐和子が、今後どんな高校生生活を送るんだろうか、そんなことを考えながら、ページを閉じました。

青春恋愛小説であると同時に、家族のあり方を問いかけてくる小説であり、「瑞々しい」そんな表現がぴったりの小説だと思います。

幸福な食卓 (講談社文庫)

幸福な食卓 (講談社文庫)