気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

その他日本の小説

君の膵臓をたべたい - 住野よる

タイトルに興味を持ち読みました。人との交わりを避けて生きる少年、死を宣告されていながらも、その対極にあり人との交わりを大切にする少女。この二人を中心に、切なくもあり、爽やかな青春の1コマを描いた小説。ラストは思わぬ展開で胸が締め付けられまし…

邂逅の森 - 熊谷達也

マタギの狩猟の仕方を克明に描いた職業小説かと思って読み始めましたが、すこし違っていましたね。マタギの世界に身を置く男・松橋富治の壮絶な生き様を描いた物語でした。厳しい自然と共に生きてきた日本人の魂や生きる力を描いているといったら良いのでし…

レオナルドの扉 - 真保裕一

レオナルド・ダ・ヴィンチが遺した秘密のノートを巡り、イタリアの小村に住む若き時計職人ジャンが活躍する夢と冒険の物語。 作者があとがきで書いているように、まるでアニメの原作を読んでいるようでした。敵役のビクトールバレルが主人公ジャンの行く先々…

平凡 - 角田光代

ある程度の年齢を重ねると「もし、あの時ああしていれば、今は別の人生があったんじゃないか」そんなことを想像してしまう事って、誰でもあるんじゃないでしょうか。そんな男女を主人公にした6つの短編が収められています。 でもその別の人生が果たして自分…

キサトア - 小路幸也

優しい気持ちになれる大人が読むファンタジー。 朝と夜それぞれ真逆の時間に眠る不思議な双子の姉妹キサとトアの名前が題名になっているけど、主人公は二人の兄のアーチ。 キサとトア二人を題名にするならば、もっと二人の不思議な症状の謎を掘り下げて欲し…

R62号の発明・鉛の卵 - 安部公房

機械、死者、動物、物体、未来人などのちょと変わった視点から人間を描く前衛的な異色短編集。 表面的なストーリーは理解できるものの、その本質はと問われると答えに窮する難解な作品が多い。その中でも表題作の「R62号の発明」「鉛の卵」はわかりやすく読…

ハピネス - 桐野夏生

非常に興味深く一気読みしました。男である僕にはこの話に出てくる女性たちがどこまでリアリティを持っているのか判断が出来ませんが、ここに登場する他人との優劣を気にしながら生活する若いママたちの姿は、都会に生きる若い母親の一面を表しているのだと…

ローカル線で行こう! - 真保裕一

いわゆるお仕事小説かと思っていたら、ちょっと違いました。 赤字続きのローカル線・もりはら鉄道の新社長になった若い女性社長が、どんな風に会社を再建していくのか、それにとても興味があったのですが、再建改革があまりにもとんとん拍子で進んで行きます…

村田エフェンディ滞土録 - 梨木香歩

今から約100年前、考古学研究のためにトルコに留学した村田青年の下宿先での様々な出来事が不思議な雰囲気で描かれれている小説。 風習、文化、宗教の違いを超えて、トルコ人、ギリシャ人、ドイツ人、イギリス人などとの交流が、静かに淡々と語られていきま…

八日目の蝉 - 角田光代

読み始めてすぐに主人公に感情移入。誘拐が犯罪だとわかっていても犯人の希和子に共感し、捕まらないでと思う自分がいました。 とはいえ、この犯罪の一番の被害者は、誘拐された乳飲み子の薫。第2部は大学生になったその薫の視点から物語が描かれますが、心…

壁 - 安部公房

若い頃読んだ本を自炊してiPhoneで再読。 人間の孤独と不条理を描いたシュールな短編集。名前を失った男の話(S・カルマ氏の犯罪)、影を喰われて透明になった男の話(バベルの塔の狸)、人々が液状化してしまう話(洪水)など、奇妙きてれつな話だけれど、…

家守綺譚 - 梨木香歩

梨木香歩さんの作品はこれが2冊め。 前回読んだ『西の魔女が死んだ』とはちがった雰囲気の作品。でもゆったりと時間が流れる世界は同じものを感じる。 約百年前の明治を舞台とした物語。亡くなった親友の実家の守をすることになった青年の四季折々の植物と「…

九月が永遠に続けば - 沼田まほかる

今まで読んだ事のない雰囲気をもった作品。高校生の一人息子の謎の失踪してしまった母親の佐知子の不安な心情は痛いほど伝わってくるが、いろんなことが複雑に絡まりすぎて、ちょっと消化不良になりそうだった。これほど複雑に愛憎が絡み合った人間関係は小…

九つの、物語 - 橋本 紡

あり得ない設定でありながら、若い女性の日常を描いた作品。前半は、起伏もなく淡々と進み、なんとなく読み進める感じでしたが、後半からは一転。主人公ゆきなの心の動きががぜん面白くなりました。兄と妹の対比が生きているとは何なのかについて考えさせる…

猫鳴り - 沼田まほかる

沼田まほかるさんの作品を初めて読みました。第1部、流産してしまった妻と夫のもとに迷い込んできた猫を何度も捨てにいく話で、なんか重苦しい雰囲気だなー。第2部、孤独な少年の心の闇を描いていて、かなり気が滅入ってしまう。第3部、あー、ここまで読んで…

ねむり - 村上 春樹

はじめて村上春樹を読む。今まで特に意識して読まなかった訳ではないけど、なんとなく読む機会が無かった。これは図書館でたまたた目に留まったもの。この作品(短編)は、眠れなくなった主婦の不思議な物語。現実なのか非現実なのかが分からなくなっていく…

海炭市叙景 - 佐藤泰志

架空の都市「海炭市」に暮らす人々を描いた短編集。最初の話があまりにも暗く、陰鬱とした印象が拭えないまま最後まで行ってしまいました。登場人物達が現実を生きているという感じはするし、心に迫るものはあるのですが、なにかしら救いが欲しかったと思い…

アジアンタムブルー - 大崎 善生

『パイロットフィッシュ』の続編ということだったけれど、読んでみると、主人公・山崎隆二のAnother Storyという感じの作品でした。この『アジアンタムブルー』も、『パイロットフィッシュ』同様、優しくて、綺麗で、切なくて、愛おしくて、静かで、でも力強…

パイロットフィッシュ - 大崎 善生

とっても切なく、そして悲しく、そして愛おしい、とても複雑な気持ちになる恋愛小説。「一度出会った人とは二度と別れることはない」、それは言い過ぎだと思うし、僕には主人公のような濃密な記憶はないけど、きっとこれまで出会ってきた人たちから影響を受…

食堂かたつむり - 小川 糸

前半は、静かにゆったりと流れる時間が心地よい。ゆったりと流れる時間のなかで、心静かに、美味しい食事をいただくことって、普段の生活の中では、ほとんどないので、想像して勝手に幸せな気分に浸ってました。そして後半、思わぬ方向に話が展開し、母と娘…

クライマーズ・ハイ - 横山秀夫

御巣鷹山の日航機墜落事故の全権デスクを任された新聞記者・悠木の苦悩を描いた作品。真剣に仕事に取り組む人たちの熱いドラマです。家族、友人、上司、部下様々な人間関係の中で葛藤する主人公・悠木の心がすごく良く表現されていると思います。作者の横山…

ウェルカム・ホーム! - 鷺沢 萠

家族を題材にした2つの心温まる作品がおさめられています。血のつながりだけが家族じゃない、一緒に支えあい、心がつながっている人々との絆。それが家族というものなんだろう。読後感がとても優しく、すがすがしく、そして、じわっと暖かくなる作品でした…

はなうた日和 - 山本幸久

タイトルの「はなうた日和」から想像できるように、読んでいて気持ちが温かくなるお話。8編の短編からなっていますが、それぞれすこしだけリンクしていているのも楽しい。本当ならば、修羅場と化しそうな場面であっても、不思議とそうならない話の展開が、…

ボーイズ・ビー - 桂 望実

母親を亡くした小学6年の少年・隼人と、たまたま知り合った偏屈で他人との交わりを拒む靴職人の70歳のじいさんとの心の交流を描いた作品です。僕は、靴職人の園田栄造の視点でがこの小説を読み進めましたが、他人との関わりを避けてきた栄造が、少年との…

ZOO(2) - 乙一

ZOO1に引き続き、ZOO2を読みました。6つの短編が収められていますが、ZOO1にはなかったドタバタ風の作品「血液を探せ!」が一番の僕のお気に入でしょうか。目覚めたら何者かに刺されて血まみれになったいた資産家とその相続人たちとのやり取りは、昔愛読し…

ZOO〈1〉 - 乙一

「カザリとヨーコ」そして「SEVEN ROOMS」と読んだところで、この手の話が、このあとも続くのか、とちょっと憂鬱になりました。ありえないような話だけど、実はどこかで起こっているかも知れない、と思わせる内容で、確かに面白いし、台詞も心理描写もすごい…

星々の舟 - 村山由佳

6人の家族それぞれの視点で描かれる恋の短編連作集です。不倫、兄妹の禁断の恋、いじめ、戦争体験など一つ一つが重いテーマで、考えさせられる内容です。心に突き刺さります。それぞれのお話しがハッピーエンドではなく、出口がなかなか見えない終わり方な…

すぐそばの彼方 - 白石一文

代議士である父親の秘書を務める主人公の柴田龍彦は、心に傷を持ち、そのダメージからなかなか立ち直れないでいます。しかし、ある父親の政権抗争に巻き込まれることで、徐々に自分を取り戻して行くのですが、人生最大の選択を迫られることになります...主人…