気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

2014-01-01から1年間の記事一覧

トオリヌケ キンシ - 加納朋子

久しぶりの加納さんの作品。とにかく良かった。 とても優しく温かい気持ちになれる6つの作品が収められています。自分が若い頃に戻ったようなそんな錯覚を覚えました。日常の中にある小さな奇跡を優しいまなざしで描いた作品は、どれも外れ無し。 特に、共感…

月光のドミナ- 遠藤周作

自炊してiPhoneで再読。 遠藤周作の初期の短編集。11の短編が収められています。どれも人の心の闇や罪深さを題材にしています。それは決して悪に満ち満ちている人ではなく皆普通の弱い人々です。どの話も重く僕の心にのしかかってきました。 その中でも、マ…

離陸 - 絲山秋子

国交省の若手キャリアの主人公が失踪したかつての恋人を探し求めるミステリー? 絲山さんとしては珍しいな、と思って読んでいたら、ちょっとちがいましたね。ミステリーを期待して購入したとしたら、ちょっと期待はずれとなってしまうかもしれません。でもそ…

ジュージュー - よしもとばなな

久しぶりの よしもとばなな さんの作品。 父が経営する小さなステーキ&ハンバーグ店「ジュージュー」を一緒に支えている娘の美津子を中心に繰り広げられる、哀しくも優しい物語。 ここに出てくる登場人物達も、そして僕たちも同じような一日を繰り返し生きて…

生命なき街 - 城山三郎

自炊してiPhoneで再読。 戦後日本の高度成長期におけるサラリーマン達の苦悩・悲哀を描いた短編集。 報われることがないまま幕を閉じる話が多い。逃げ出したくても逃げだすことも難しい厳しい時代に生きたこういった名もなき企業戦士達が日本を支えてきたん…

銀翼のイカロス - 池井戸潤

半沢直樹シリーズ第4弾。 今回は破綻寸前の航空会社が舞台です。この人物のモデルになったのは誰だろうと勝手に想像してしまいました。社会派ドラマとして読むといろいろと物言いがつきそうな感じもしますが、勧善懲悪のエンターテイメントとしては、理屈抜…

やさしい訴え - 小川洋子

カリグラフィー作家とチェンバロ製作者という僕にとっては非日常に生きる人の日常。 そこで織りなす男女の三角関係が残酷でありながらとても静かで悲しくそして美しい。 主要人物三名と一匹(犬)が皆何かを失っているという設定が、喪失感、孤独感や不安定…

ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく - 堀江貴文

証券取引法違反で逮捕され、2年半の刑期を終えたホリエモンがいったいどんなことを書いているのか、意外や意外、実に全うなことが書いてあります。 ゼロの状態の自分に小さな一を足して行く、これの積み重ねが大切だ。これが自分の人生を変えることになる、…

親鸞(下) - 五木寛之

中学時代にただただ丸暗記した「浄土宗、法然、念仏」の裏にはこのような世の中の背景と人間ドラマがあったのかと感慨深い気持ちになりました。 もちろんエピソードのほとんどは創作だと思いますが、それでも登場人物たちの想いが深く心に響いてきました。 …

政と源 - 三浦しをん

73歳の幼馴染の国政と源二郎の友情物語。人情味あふれる話で面白く読むことが出来ました。この二人ほんとうに羨ましい関係です。年取ったときに、こんな風につきあうことのできる友人がいて、そして若い人とも繋がっているって、本当に素晴らしい。 源がつま…

R62号の発明・鉛の卵 - 安部公房

機械、死者、動物、物体、未来人などのちょと変わった視点から人間を描く前衛的な異色短編集。 表面的なストーリーは理解できるものの、その本質はと問われると答えに窮する難解な作品が多い。その中でも表題作の「R62号の発明」「鉛の卵」はわかりやすく読…

つばき - 山本一力

深川の一膳飯屋「だいこん」を営むつばきの生き生きとした姿が小気味よい物語でした。 ただ、物語の早々で、騙され大きな損失を出したエピソードは、意外とあっさりと片付いてしまって拍子抜け。つばきの恋の話もちょっと強引な感じ。 これは、前作「だいこ…

修羅走る 関ヶ原 - 山本兼一

関ヶ原の戦い一日だけを描いたこの小説は、470ページにもおよぶ大作ですが、その長さを感じさせず、僕としてはかなりのハイペースで夢中で読み終えました。 多くの武将の視点から関ヶ原の戦いを描き、物語を一つにまとめあげるという手法はとても新鮮。それ…

親鸞(上) - 五木寛之

タイトルからはとても堅苦しい感じを受けていましたが、読み始めてみるとそれもただの杞憂でした。 登場人物たちが皆魅力的に描かれていて、とても読みやすい文章でした。悩み苦しむ若き日の親鸞の姿に、真理に迫ろうとする親鸞の姿に、ぐっと惹かれました。…

英国一家、日本を食べる - マイケル・ブース

イギリス人フードジャーナリストとその家族の日本での食べ歩きの旅を綴ったこの本は、日本食と日本の食文化の凄さを教えてくれます。日本人である僕が知らない日本のことが沢山書かれていて、とても興味深い内容で勉強になりました。 季節感を大切にし、旬の…

はなとゆめ - 冲方丁

清少納言の独り語りの形式で、中宮定子と清少納言の宮中での出来事が綴られています。 最初は現代語での語りに強い違和感を覚えましたが、途中からは気にならなくなり、最後まで読み進めることができました。 機知に富んだ当意即妙な平安貴族たちのやり取り…

心中天浦島 - 栗本薫

iPhoneで自炊して再読。 6編のSF短編が収められています。リンクを貼った新装版には、もうひとつの作品「ファースト・コンタクトの終わり」が収められていますが、それは読んでいません。 全体的にちょっとパンチ力に欠けるかなという気がしますが、完全に内…

幼年期の終り - アーサー・C・クラーク

地球外からの力で、地上から戦争が無くなったというのは何とも皮肉だ。 地球外生物による地球人懐柔の物語なのかと思ったら、後半はまったく想像していなかった展開に。 生物の進化を目の当たりにしたことの無い僕にはよくわからないが、自分たちの子孫に圧…

回転扉 - 半村良

iPhoneで自炊したものを再読。 半村良得意の伝奇ものと現代人情ものの合わせ技といった異色SF作品。 35年前に亡くなった父親が、当時のままの姿で息子の前に現れた。息子は明治生まれの父親の言う通りに事業を進めるが、そこには、日本の進路を変えようとす…

セラピスト - 最相葉月

箱庭療法や風景構成法を中心に日本の心理療法について書かれたルポルタージュ。戦後日本のカウンセリングの歴史、変遷、問題点が詳しく書かれています 心の病と向き合い患者の心に寄り添う難しさが伝わってきます。心理療法について全くなんの知識もなく読ん…

島はぼくらと - 辻村深月

辻村深月さんの作品、初読みです。 瀬戸内海の島に住む4人の高校生(男女2名ずつ)と島の住人たちが織りなす実に爽やかな青春小説。 最初の幻の脚本のエピソードがいったん途切れたかと思ったら、最後にちゃんと繋がってくれて読み手としては嬉しい限り。た…

三国志(十) 五丈原の巻 - 吉川英治

約8ヶ月にわたって読んできた三国志がとうとう終わりました。 最終巻は諸葛亮孔明と司馬懿仲達との戦いが中心。二人の知略戦は読み応えがあるけれど、やはり関羽、趙雲といった英傑がいない戦いは寂しいです。終わりが迫っていることがわかっているので、わ…

夢を売る男 - 百田尚樹

夢を売るんじゃなくて、一般人の夢を食い物にする詐欺まがいの出版社で働く牛河原って男にどんな天罰が待っているんだろう、と思って読んでいたら、なんだか思ったのと違う方向に。 自費出版を目指す一般人から金を巻き上げている牛河原が、最後は意外や意外…

米美知子の自然風景撮影術 情景探し - 米美知子

一眼レフカメラを購入したので、写真撮影の参考になればと思い購入しました。 掲載されている写真がどれも美しく、なるほど「風景」よりも「情景」がぴったりだなーと感じました。 初心者の僕には、ここに掲載されているような写真を撮るのは難しいと思いま…

三国志(九) 出師の巻 - 吉川英治

関羽、張飛、曹操をはじめ三国志の主要人物が次々と亡くなってしまい、寂しさを感じる巻ですね。そして劉備玄徳も終わりの時を迎え、孔明が玄徳の遺志を引き継ぎ物語の中心に。いよいよ三国志の物語が終わりに近づいてきたなと感じます。 南蛮遠征での孟獲と…

楠の実が熟すまで - 諸田玲子

何年も前から読みたい本リストにあった本です。やっと読みました。諸田玲子さんの作品を読むのはこれが最初です。期待に違わぬ出来でしたね。 最初の3つの殺人事件のエピソードが終わり、しばらくしてからも主人公は誰?の状態でしたが、利津が登場し一気に…

五分後の世界 - 村上龍

第二次世界大戦で日本が負けを認めずに、未だに戦争が継続していたら? そして、その世界に、現代の日本人が迷い込んでしまったら? そんなもう一つのニッポンを描いた小説。 本土の徹底抗戦で人口が26万人に激減した日本人は、地下に潜りゲリラ戦で連合国と…

神去なあなあ夜話 - 三浦しをん

前作「神去なあなあ日常」があるのを知らずに読みました。 でも前作読んでなくても十分に楽しめました。三重県の山奥の村で林業に従事する20歳の勇気の日記という形式の小説だけど、文章がとても生き生きしていてるし、そのゆるさがとても心地よい。 都会育…

40歳過ぎたら三日坊主でいい - 成毛眞

「何のために働くのか」を考える前に、「何のために生まれたのか」という問いを考えてみるべきだ。という考えが根底にある成毛さんならではの一風変わった自己啓発本。 前半は、以下のようなかなり過激な文が並びます。 「日本の四十代以上のビジネスマンの…

三国志(八) 図南の巻 - 吉川英治

劉備が蜀を制して、孔明が思い描いた天下三分の計が実現。三国時代に突入します。 この巻は、張飛、関羽、超雲、馬超、黄忠といった劉備の家臣たちが大活躍で、読んでいてわくわく感がこれまでの巻の中で一番あったように思います。特に、老兵黄中の活躍はお…