気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

遠藤周作

闇のよぶ声 - 遠藤周作

自炊してiPhoneで再読。 遠藤周作にしては珍しいミステリー小説です。ある若い女性が神経科医の会沢を訪ねて来るところから物語は始まります。三人のいとこが謎の失踪し次は自分なのかと不安にさいなまれる婚約者の精神状態を心配して、彼女は病院を訪れるの…

月光のドミナ- 遠藤周作

自炊してiPhoneで再読。 遠藤周作の初期の短編集。11の短編が収められています。どれも人の心の闇や罪深さを題材にしています。それは決して悪に満ち満ちている人ではなく皆普通の弱い人々です。どの話も重く僕の心にのしかかってきました。 その中でも、マ…

留学 - 遠藤周作

留学を題材にした三部作。どれも重たい内容です。 「ルーアンの夏」「爾も、また」は、それぞれ時代は違いますが、西洋文化と日本文化の壁に苦しみ挫折する主人公の姿がなんとも言えずやりきれない気持ちになります。留学の経験はありませんが、主人公の心情…

悲しみの歌 - 遠藤周作

若い頃読んだのを再読。「海と毒薬」の続編と言われる作品で、戦時中に人体実験に参加した勝呂医師のその後を描いています。読んでいて、辛く苦しくそして哀しくなる作品ですが、ページをめくることはやめられない、そんな力を持っています。 「海と毒薬」か…

王妃マリー・アントワネット(下巻) - 遠藤周作

バスティーユ牢獄襲撃事件 - ヴァレンヌ逃亡事件 - タンプル塔の幽閉 - ルイ16世の死刑。そして、マリーアントワネットの死と、下巻は一気に不幸の底に転落してゆくマリーアントワネットの姿が描かれています。上巻と異なり、苛酷な運命の中、王妃としての気…

王妃マリー・アントワネット(上巻) - 遠藤周作

フランス革命を王室と民衆の2つの側から描いています。上巻はマリー・アントワネットがフランスに嫁いで来てから、フランス革命の引き金になった首飾り事件までです。マリー・アントワネットの末路が分かっていても、その過程が引き付けられます。いや分か…

沈黙 - 遠藤周作

非常に重い作品です。キリシタン弾圧に対し、沈黙し続ける神。なぜ神はこのような事態を放っておくのか、なぜ彼らは死んでいかなければならないのか。神はいるのか。この問に答えるのは無宗教の僕には難しい問題です。未来の見えない状況でいったい作者はど…

砂の城 - 遠藤周作

随分前に読んだ本の再読です。母が遺した「美しいものと、けだかいものへの憧れだけは失わないでほしい」という言葉の意味を探し求める若い女性の青春小説です。どうしようもない男に惚れ、身をもち崩すおろかな女性と、まじめで常識的な主人公泰子との極端…

侍 - 遠藤周作

江戸時代初期、伊達政宗の命によりメキシコ、ヨーロッパに渡航した支倉常長(はせくら つねなが)がモデルとなった小説です。いわゆる「慶長遺欧使節」ですね。歴史教科書ではなかなか知りえない時代背景と壮絶な人間ドラマがここにはありました。小説では、…

海と毒薬 - 遠藤周作

太平洋戦争末期に実際にあった九州帝国大学医学部で起こった事件がモチーフになっているとのことです。外人捕虜を生きたまま解剖するという実験に参加することになってしまった医学生の勝呂、戸田、看護婦の上田のそれぞれの視点でこの事件を描いています。…

彼の生き方 - 遠藤周作

子供のころから吃音で悩む気の弱い主人公の福本一平が、唯一心を開くことができたのが動物でした。そんな彼が大人になり、野性の日本猿の研究者となります。しかし、彼の行く手には、「権力」が立ちふさがり、彼の生き方そのものを否定しようとします。そん…

白い人 黄色い人 - 遠藤周作

『青い小さな葡萄』につづき、遠藤周作の初期の作品である『白い人・黄色い人』を再読しました。この本は、「白い人」と「黄色い人」という独立した2つの短編が収められています。タイトル通り、「白い人」が白人を描いた作品で、「黄色い人」が日本人を描…

青い小さな葡萄 - 遠藤周作

遠藤周作の初期の純文学作品。この作品は、敗戦国である日本とドイツの青年が救いを求め、「青い小さな葡萄(神、善意の象徴)」を追い求める物語です。日本人、ドイツ人という理由だけで迫害を受ける彼らは、「青い小さな葡萄」を探すことで救いを得ようと…

口笛をふく時 - 遠藤周作

最近は昔読んだ本を読み返すことが多いですが、これもそのうちの一冊。再読には当たらないくらい、内容はすっかり忘れていました。この作品は、戦中派の父親と戦後生まれの息子の間の断絶がテーマの一つ。今は、戦後生まれのおじいちゃんもいる時代なので、…

灯のうるむ頃 - 遠藤周作

ガンの特効薬の開発に取り組む町医者を描いた作品。主人公・牛田善之進はひとり黙々とガンの研究を続けているのですが、ある偶然から実験用のねずみがガンに強い抵抗力を示すことに気がつきます。それをきっかけに実験をかさね、癌に効く試薬を開発し、その…

深い河 - 遠藤周作

遠藤周作の本を読んだのは何年ぶりだろうか。僕が、十代〜二十代にかけてかなりの作品を読んだものです。遠藤氏の純文学に分類される小説はあまりにも重いテーマを扱っているものが多く、しばらく敬遠していましたが、久しぶりに読んでみて、当初思っていた…