気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

2011-01-01から1年間の記事一覧

海炭市叙景 - 佐藤泰志

架空の都市「海炭市」に暮らす人々を描いた短編集。最初の話があまりにも暗く、陰鬱とした印象が拭えないまま最後まで行ってしまいました。登場人物達が現実を生きているという感じはするし、心に迫るものはあるのですが、なにかしら救いが欲しかったと思い…

風魔(上) - 宮本昌孝

戦国時代に活躍した風魔一族の頭領、風魔小太郎を主人公にした物語です。最初のころの時代背景の説明のところで挫折しそうになりましたが、頑張って読み進めて正解でした。主人公の小太郎がとても魅力的に描かれていて、途中からぐいぐいと引き込まれていき…

ガニメデの優しい巨人 - ジェイムズ・P・ホーガン

前作『星を継ぐもの』に比べると異星人ガニメアンと地球人の交流を描いたこの第2作は、若干インパクトは少なかったけど、それでも十二分に楽しめました。異星人とどうやって意思疎通するのかという点で、ある程度納得できる答えが用意されていたので、すんな…

阪急電車 - 有川 浩

はじめて読む有川 浩の作品。今まで知らなかったけど、女性だったんですね。『阪急電車』は、2年ほど前から読みたい本リストに入っていたのですが、電子書籍で購入できるようになったのを機会に購入しました。電車にたまたま乗り合わせた人たちが、織りなす…

その日のまえに - 重松清

身近な人の死をテーマにしたこの短編集は、いつかは誰にでも訪れる「その日」とどう向き合うべきなのか、人の幸せって何か、家族に何ができるのか、そんなことを考えさせてくれます。特に「その日のまえに」~「その日」~「その日のあとで」の連作は、心に響…

家日和 - 奥田英朗

オークションに嵌った妻の話、会社が倒産し主夫になった男の話、妻との別居で独り身を楽しむ男の話などなど、家族を扱った短編集。登場人物がどれも身近に感じられて、共感を覚えてしまいます。特に「夫とカーテン」がお気に入りですが、その他の作品どれも…

花のあと - 藤沢周平

『鬼ごっこ』、『雪間草』、『寒い灯』、『疑惑』、『旅の誘い』、『冬の日』、『悪癖』、『花のあと』が収録された藤沢周平の短編集。表題作『花のあと』は、淡い初恋と仇討ちを織り交ぜた作品。主人公「以登」の女性らしい心と凛とした強い意志に感動しま…

火星年代記 - レイ・ブラッドベリ

1950年に発表されたブラッドベリの古典SFの傑作。人類の火星移住の歴史を描いたこのSFは、とても不思議な雰囲気を持った作品でした。いくつもの小さな物語それぞれが、幻想的であり、叙情的であり、詩的であり、味わい深く引き込まれました。人間の愚かさや…

果しなき流れの果に- 小松左京

若い頃小松左京の作品は良く読みました。この「果しなき流れの果に」も昔読んでその世界観に感動したのを覚えています。ほとんどそのストーリーは忘れてしまいましたが...今回再度読み直して、場面がころころ変わり展開も早く、理解が十分にできないところも…

富豪刑事 - 筒井康隆

とても楽しめました。TVドラマでは深田恭子が主人公でしたが、原作では、男性の刑事が主人公です。大富豪の息子である神戸大助(刑事)が、大金を実に効果的?に使い、事件を次々と解決して行きます。収められている4作どれもが、お金の使い方が独創的で、事件…

汐のなごり - 北重人

江戸時代の水潟(架空の街、山形県酒田市がモデルと思われる)を舞台とした短編集。第140回直木賞の候補作で、6編が収められています。どれも心に染みるいい話でした。特によかったのは「海羽山」。幼いときに生き別れた兄と、年老いてからの再開の物語に…

ミーナの行進 - 小川洋子

数年前から「読みたい本リスト」にありながら、他の本を優先してなかなか読む機会がありませんでしたが、やっと読むことができました。 主人公の女の子が、従姉妹のミーナの洋館で暮らした一年間を綴った物語。数々のエピソード(コビトカバとの触れあい、図…

夏から夏へ - 佐藤多佳子

2007年の大阪世界陸上を走り日本新、アジア新を出した男子4×100mリレーの4人(塚原、末續、高平、朝原)のドキュメンタリー。陸上競技にはまったく縁のない僕が読んでも十分に4継の魅力が伝わってくる良い本だと思います。5人目のリザーブ小島選手が取り…

火天の城 - 山本 兼一

安土城築城を描いた異色の歴史小説。とても面白かったです。日本人の職人気質とはまさしくこういうことなんだと、思わせる一冊でした。こういった人たちの血が受け継がれて今の日本があるんだなーと、とても感慨深い気持ちになります。安土城築城という巨大…

マイクロソフトで学んだこと、マイクロソフトだからできること - 樋口 泰行

本書を読んで感じるのは、日本マイクロソフトの樋口社長は、とても誠実で謙虚な方だということです。様々な問題に対し、真摯に取り組んでいることが文章の端々からうかがうことができます。 地位や立場を利用しパワーで組織を動かすのではなく、心と情熱で組…

平成大家族 - 中島京子

初めて中島京子の作品を読みました。72歳の元歯科医の緋田龍太郎は、妻と三十路のひきこもり息子、90歳の要介護の姑の4人暮らし。そこへ、自己破産した長女夫婦とその中学生の息子が転がり込み、立て続けに、離婚した二女が舞い戻り、一気に8人の大家族…

星を継ぐもの - ジェイムズ・P・ホーガン

これぞ、サイエンス・フィクションです。戦闘もない、アクションもない、侵略ものでもない、冒険ものでもない、超能力ものでもない、ロボットものでもない、でも面白い。 月で見つかった5万年前の死体の謎を解くために、謎仮説を立て、それを少ない事実から…

オーデュボンの祈り - 伊坂幸太郎

謎解きものと言っていいのかどうかわかりませんが、久しぶりに「謎解き」の面白さを味わえました。しゃべる案山子の設定は、どうなのか? という疑問は残りますが、なかなか面白い話でした。なんといっても、荻島に無いものに人々が出会ったとき、どんな素晴…

ウィザードリィ日記 - 矢野徹

還暦を過ぎた翻訳者/小説家である著者のパソコン奮闘記。パソコンを買ってからの1年間を、現実と幻想をとりまぜて綴った日記です。安田均氏が書いた『SFファンタジーゲームの世界』という本を読んで、ゲーム「ウィザードリー」の存在を知った著者が、翌日に…

Twitter社会論 - 津田 大介

iPhone/iPodTouch版で読みました。僕自身Twitterをまともに使い始めて、1年にも満たないということもあり、とても興味深く読むことができました。やはり、Twitterのリアルタイム性というのは、強力だと思います。それは今回の震災でも証明されたし... でも…

アジアンタムブルー - 大崎 善生

『パイロットフィッシュ』の続編ということだったけれど、読んでみると、主人公・山崎隆二のAnother Storyという感じの作品でした。この『アジアンタムブルー』も、『パイロットフィッシュ』同様、優しくて、綺麗で、切なくて、愛おしくて、静かで、でも力強…

パイロットフィッシュ - 大崎 善生

とっても切なく、そして悲しく、そして愛おしい、とても複雑な気持ちになる恋愛小説。「一度出会った人とは二度と別れることはない」、それは言い過ぎだと思うし、僕には主人公のような濃密な記憶はないけど、きっとこれまで出会ってきた人たちから影響を受…

門 - 夏目漱石

『三四郎』 - 『それから』 -『門』 と続く3部作の最後の作品ですが、『それから』を飛ばして読んでしまいました。前半は、残念ながらぐいぐいと物語の中にに引っ張り込む力を感じませんでした。後半になり、この夫婦に何があったのかがわかり、やっと僕の心…

てるてるあした - 加納朋子

とても温かい気持ちになりました。自分のことしか考えられなかった主人公の少女照代が、周りの人々に支えられながら、少しずつ周りが見えるようになり、成長してになってゆく姿がとても良かったです。そして、つながることができるのは、同世代の人たちばか…

三四郎 - 夏目漱石

随分前に読んで、途中で挫折した本ですが、青空文庫で再読。三四郎の煮え切らない態度に自分を重ね合わせながら読みました。明治時代の若者も現代の若者も、根っこのところはそれほど変わっていない。三四郎も、美禰子もみんな迷羊なんだなー。文章の言い回…

No.6 #4 - あさのあつこ

「BOOK」データベースより どうやったら矯正施設の内部に入れるのか。中はどうなっているのか。どんな手を使っても探りだし、侵入しなくてはならない。それが沙布を救う唯一の方法なのだから。紫苑のまっすぐな熱情にネズミ、イヌカシ、力河が動かされる。そ…

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略 - クリス・アンダーソン

iPod Touchで読みました。フリー(無料)の歴史から話を始め、フリービジネスがどう変化してきたのか、現在のビットの世界のフリーはどうやって利益を得ているのかを解説した本。ネットの世界では様々なものがFREEで利用できます。このブログもそうですし、t…

おすすめ文庫王国2010-2011

毎年楽しみにしている『おすすめ文庫王国2010−2011』。昨年末に読んでいたのですが、ここにアップするのが遅れました。2010年度の様々なジャンル毎の文庫ベストテンを紹介しています。現代文学、恋愛小説、SF,時代小説、エンターテイメント、国内ミ…

天地明察 - 冲方 丁

江戸時代初期、徳川家お抱えのプロの碁打ちであり数学者の渋川春海(本名:安井算哲)が、日本独自の新しいを太陰暦を作り上げる物語。とても晴れやかで清々しい気持ちにさせてくれます。師と仰げる人たちと、そして志を同じくする人たちと、自分の夢を追い…

空の剣 男谷精一郎の孤独 - 高橋三千綱

剣聖と称された男谷精一郎の半生を描いた作品かと思って読み始めましたが、違いました。これは青春時代小説ですね。少年剣士がまだ見ぬ母を訪ね旅をすることで、人間的に成長してゆく物語です。若き主人公が、幾多の試練を乗り越えていく姿が実に良かったで…