気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

宮部みゆき

過ぎ去りし王国の城 - 宮部みゆき

アバターを使って絵の中に入り込むことができる、そんな不思議な絵を偶然手にいれた中学3年生の「尾垣真」。同級生の「城田珠美」との二人でどんな楽しい冒険を始めるのだろうかと思って読み始めたら、話は想像とは違う方向に。 ファンタジーとはいえ、扱っ…

模倣犯 5 - 宮部みゆき

最終巻は一気読みです。 やはり由美子にはああいう最後が運命付けられていたんですね。これ以上の犠牲者が出てこないことを願っていたのに。 それにしても、この事件の幕を引いたのが、警察でもなく有馬義男でもなく、伏兵の前畑滋子だったのには驚きました…

模倣犯 4 - 宮部みゆき

この物語が犯人逮捕劇や謎解き物では無い事に今更ながら気がつきました。 読者が事件の真相を知っているからこそ、事件に巻き込まれた人々の行動や心の動きに、共感したり、悲しんだり、疑問に思ったり、歯がゆく思ったり、といろんな感情が沸き上がって来ま…

模倣犯 3 - 宮部みゆき

第2巻に続いて、事件を起こした側からの視点で物語が進みます。後半の和明とヒロミの絡みは、実に読み応えがありました。 「誰かに向かって手を広げ、僕がついているよ、一緒なら大丈夫だよと声をかけた瞬間に、 人間は、頼られるに足る存在になるのだ。最初…

模倣犯 2 - 宮部みゆき

うーん、そう来ましたか。 1巻で起こった殺人事件を、今度は犯人側の視点で描いています。とにかく冗長と思えるくらい事件関わる人たちの行動と心の動きを丁寧に詳しく描いています。けど、決して退屈という訳ではなく、ぐいぐいと先を読ませます。単なる犯…

模倣犯 1 - 宮部みゆき

読みたい本リストに長年あった作品です。文庫本5巻という長さに、読むのを先延ばしにしていましたが、やっと重い腰を上げて読み始めました。そして、すぐに物語の中に引き込まれました。 スピード感はありませんが、とても丁寧な描写で登場人物達の心の動き…

ペテロの葬列 - 宮部みゆき

約1年ぶりに読む宮部みゆきの作品。 「名もなき毒」を飛ばしてこの本を読みました。読んでよかった。ぐいぐいと物語の中に引き込まれました。 マルチ商法、詐欺商法を題材にしたこの作品は、普通の人々にも「悪は伝搬していく」という重いテーマを丁寧に丁寧…

桜ほうさら - 宮部みゆき

宮部みゆきの時代小説は、程よい軽さと緊張感のバランスが良く、すいすいと読んで行けます。 人間の心の闇を描いた最終話の盛り上がり方、緊迫感はさすがです。主人公・笙之介と和香の会話がこころを和ませてくれますし、あのエピソードがここに繋がってくる…

小暮写眞館 - 宮部みゆき

久しぶりに読んだ宮部みゆき作品。家族、友情、恋愛などが高校生の視点で描かれる青春小説。火車や理由、クロスファイアなどの社会派小説がお気に入りの僕としてはちょっと物足りなかったけど、この700ページを超える長い小説に飽きる事無く読めたのはやはり…

孤宿の人(下) - 宮部みゆき

もうちょっと短い話にしても良いかなと思いますが、それも帳消しにする終盤の展開は、さすが宮部みゆきです。小さな主人公「ほう」に感情移入し、最後は感動の涙でした。妻子三人と部下二人を殺した加賀様の人物設定も見事。「ほう」と加賀様の二人のシーン…

孤宿の人(上) - 宮部みゆき

久しぶりに宮部みゆきの作品を読みました。文章の読みやすさ、情景描写のうまさはさすがですね。でも、話の展開がちょっとゆっくりしすぎているような。後半になってやっと面白くなってきました。評判の良い作品なので下巻が楽しみです。孤宿の人〈上〉 (新…

誰か - Somebody - 宮部みゆき

財閥会長の個人運転手・梶田が自転車に轢き逃げされて命を落とした。梶田の娘たちの依頼で、事件の真相を追いかけるうちに意外な方向に展開してゆく..いきなりですが、「誰か」の文庫本の解説から引用します。 「ハリウッド映画のような、起伏にとんだ展開が…

平成お徒歩日記 - 宮部みゆき

「お徒歩」と書いて「おとほ」ではなく「おかち」と読むんだそうです。この本、宮部みゆきの小説以外の本で、一風変わった紀行物というんでしょうか。江戸物を得意とする彼女ですが、苦労するポイントが、「時間と距離」なんだそうです。深川浄心寺裏の山本…

幻色江戸ごよみ - 宮部みゆき

12編の短編が収められている時代もの。どれも、内容濃いです。読後の余韻を12回味わえるとてもお得な作品集ですね。『幻色』の名が示すとおり、ホラー的な要素を取り入れたものが多いですが、すべてがホラー的かというとそんなことはありません。作者の…

あかんべえ(下) - 宮部みゆき

後半、2つのクライマックスがあり、両方とも泣けます。そして、暖かい気持ちになります。宮部みゆきには珍しいドタバタ劇もあり、笑いと涙ありの感動物語になっています。彼女の作品らしくない部分もあり、異色の作品かな、と思います。もちろん、宮部みゆ…

あかんべえ(上) - 宮部みゆき

「ファンタジーとミステリーと人情味が絶妙に溶け込んだ感動の時代長編」ということですが、上巻を読み終わった時点では、物語の前半部分なので、まだ「感動の」という場面はありません。今後どう展開してゆくのか楽しみです。序章部分は、ちょっと退屈なの…

ブレイブ・ストーリー (下) - 宮部みゆき

主人公のワタルは、旅の仲間と共に、助け、助けられながら、そして、悩み苦しみながらも、力を合わせ運命の塔を目指してゆく。歩みは遅いけれど、着実に。一方、たった一人で一直線に運命の塔を目指すミツル。手段を選ばない彼は、強力な魔法の力で多くの犠…

ブレイブ・ストーリー (中) - 宮部みゆき

主人公のワタルは、キ・キーマ、ミーナという旅の友達を得て、現世での自分の運命を変えるために、運命の塔を目指す旅に出ます。ゲーム好きの宮部みゆきが作り出す、幻界(ビジョン)は、いろいろなアイデアが盛り込まれていて楽しめます。この旅を通じ、ワ…

ブレイブ・ストーリー (上) - 宮部みゆき

「宮部みゆき」の書いたファンタジー小説、今アニメ映画で公開されているという程度の事前知識だけだったので、『ドリームバスター』や、『ICO -霧の城-』のような話しなのかな、と思って読み始めましたが、上巻は、現実世界の話が3/4を占めていていまし…

蒲生邸事件 - 宮部みゆき

日本SF大賞受賞作。予備校受検のために状況した受験生が、ホテル火災に見舞われ、時間旅行能力のある謎の男に助けられ、二・二六事件が起こった昭和11年へ。時間旅行の能力を持った人物を主人公とするのではなく、普通の高校生を主人公にし、過去にタイム…

かまいたち - 宮部みゆき

宮部みゆきの初期の時代物4編が納められています。表題作「かまいたち」は、連続殺人犯(辻斬り)を目撃してしまったことから、事件に巻き込まれてしまう若い娘の心理描写が秀逸。僕が一番気に入ったのは最も短い話である「師走の客」。最後に救いを用意し…

魔術はささやく - 宮部みゆき

宮部みゆきの他の作品もそうですが、この作品も謎が解けてから、本当に書きたかった(と思われる)もう一つのドラマが用意されています。この2つめのドラマに心が揺さぶられます。登場人物の背景設定、いくつもの伏線、とにかく良く練られた作品だと思いま…

地下街の雨 - 宮部みゆき

表題作「地下街の雨」をはじめ「決して見えない」「ムクロバラ」「さよなら、キリハラさん」など七つの短篇集。宮部みゆきにしてはめずらしくホラー的な要素が強い作品もあります。僕が好きなのは、表題作の「地下街の雨」。都会の片隅で生きている女性の心…

返事はいらない - 宮部みゆき

宮部みゆきの短編集「返事はいらない」は、数年前一度読んだのですが、再度読み直してみました。人間の記憶ってほんとあやふやなものですね。すっかり内容を忘れていました。唯一、「ドルネシアへようこそ」が僅かながら記憶にありましたが、それでも、ラス…

心とろかすような―マサの事件簿 - 宮部みゆき

宮部みゆきのデビュー作『パーフェクト・ブルー』の続編。元警察犬・マサと蓮見探偵事務所の加代子等の活躍を描く、短編集。収録作品は、「心とろかすような」「てのひらの森の下で」「白い騎士は歌う」「マサ、留守番する」「マサの弁明」の5編だが、最後…

長い長い殺人 - 宮部みゆき

「短編小説」を連ねて行き一つの長編にする、という構成を取っている推理小説です。まあこの部分は宮部みゆきの得意とするところですが、物語の語り手が、なんと「財布」なのです。これはかなり異色ですね(僕は無機物が語り手になっている作品を読んだのは…

ぼんくら(下) - 宮部みゆき

ぼんくらの下巻は、事件の謎が少しずつ少しずつ解き明かされていくのですが、読み出したら止まりませんでした。江戸人情物としても、ミステリーとしても楽しく読めました。個性豊かな登場人物たちも、とても生き生きと描かれており、さすが宮部みゆきという…

ぼんくら(上) - 宮部みゆき

江戸、深川の鉄瓶長屋で起こるちょっと変わった事件の謎を、ぼんくら同心・平四郎と美少年の甥・弓之助が探るミステリー。この本の目次を見ると上巻は、「殺し屋」「博打うち」「通い番頭」「ひさぐ女」「拝む男」「長い影(一〜六)」、下巻は「長い影(七…

スナーク狩り - 宮部みゆき

息子が「何か面白い本はない?」と言ってきたときに、息子に渡した本がこの「スナーク狩り」。以来、息子も宮部みゆきの本を読むようになりました。この本、出だしが最高に良いですね。散弾銃を隠し持ち、ホテルの披露宴会場へ向かう若い女性。この冒頭の部…

堪忍箱 - 宮部みゆき

人の心の内の内を覗き込めば、人に知られたくない思い、記憶、弱さ、嫉妬...があるものです。そんな心の中を描いた短編集が、堪忍箱です。蓋を開けたら最後、この近江屋に災いが降りかかるという堪忍箱とは…、表題の「堪忍箱」を含む8編が収録されています…