きのうの影踏み - 辻村深月
辻村深月が書く怪談集。
といっても恐怖で震えてしまうというよりは、背中がすこしゾクってなる感じ。幾つかの話は、これってエッセイ?と思うような語り口で、本当にあった出来事なのかと不思議な気分になりました。
「十円参り」と「噂地図」は誰もが持っているであろう小さな心の闇が描かれていて、怖いと思いました。
最後の「七つのカップ」は哀しく、切ない内容だったけど、とても良い内容でした。
朝が来る - 辻村深月
普通の人がほとんど知らない日本社会が抱える問題について、少女の視点から描いた社会派小説。
特別養子縁組を扱ったとても重い内容でしたが読んでよかったと思います。
幼いながらも妊娠出産し、結局子供を手放さなくてはならなかったひかり、子供が授からず、ひかりの子供を養子縁組で育てる養父母。その両方の視点から物語が描かれています。ひかりはどこまで転がり落ちてしまうのだろうかと、とても配しながら読み進めましたが、手を差し伸べてくれる人がいて、最後はすこしホッとできました。彼女とその子供には、これからどんな人生が待っているのかな。余韻が残る終わり方でした。
君の膵臓をたべたい - 住野よる
タイトルに興味を持ち読みました。人との交わりを避けて生きる少年、死を宣告されていながらも、その対極にあり人との交わりを大切にする少女。この二人を中心に、切なくもあり、爽やかな青春の1コマを描いた小説。ラストは思わぬ展開で胸が締め付けられました。期待以上の出来でした。
小説の良いところは僕のようなおやじでも、読んでいる間はこの二人と共に生きることができること。
「偶然じゃない。運命なんかでもない。君が今までしてきた選択と、私が今までしてきた選択とが、私達を会わせたの。私達は、自分の意思で出会ったんだよ」彼女の言葉が心に残ります。
(しなかった選択も含め)小さな選択の積み重ねの先に今の自分があり、その自分を肯定できるような人生でありたいなーとつくづく思います。でも選択の重みを感じながら1日1日をせいいっぱい生きる、これが難しいです。
サラバ! 下 - 西加奈子
上巻を読んでから、かなり時間が経ってしまいましたが、下巻読み終わりました。
歩が転落していくのは、家族との関わり合いを避け、すべてを人のせいにしていたツケが回って来たということなのかな。
姉が歩に言う「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ」という言葉にいろいろ考えさせられる。(それが宗教であれなんであれ)信じるものを持たない人生は弱いということなのか。
起伏の少ないストーリーでありながら、読者の興味を離さないグイグイと引っ張る文章はさすがというしかない。
でも、歩が再生のきっかけをつかむラストはすこし消化不足気味。
人工知能は人間を超えるか - 松尾豊
人工知能についてわかりやすく説明してくれているので、今のAIで何が出来て何がで出来ないかがよくわかります。
でも、具体的なAIの仕組みの話になると、第2次AIブームまでは具体的なイメージを掴めるのですが、機械学習、ディープラーニングになると、具体的な仕組みのイメージがなかなかわきません。まあ僕の頭じゃ無理ですね。
将来、そこかしこにAIが使われる時代が来るのかと思うととても興味深いです。
とにかく日本のAI研究者に頑張ってほしいと思います。