気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

2012-01-01から1年間の記事一覧

九つの、物語 - 橋本 紡

あり得ない設定でありながら、若い女性の日常を描いた作品。前半は、起伏もなく淡々と進み、なんとなく読み進める感じでしたが、後半からは一転。主人公ゆきなの心の動きががぜん面白くなりました。兄と妹の対比が生きているとは何なのかについて考えさせる…

利休にたずねよ - 山本 兼一

全く前提知識がないまま読み始めました。千利休が有名な茶人ということくらいしか、知識がありませんでしたが、とても面白い話でした。千利休は、世の中を達観し、俗事を超越し、さとりの境地にある人物なのではと勝手に想像していましたが、熱く激しい心と…

.NET開発者」のためのSilverlight入門 - 森 博之

その名の通り、.NET開発者のためのSliverlight入門書です。すでに、WindowsFormsや、ASP.NET WebFormでの開発経験がある方が対象です。Microsoft MVP for C#/Client App Dev/Silverlight を受賞されている方が書かれているので安心して読むことができます。…

猫鳴り - 沼田まほかる

沼田まほかるさんの作品を初めて読みました。第1部、流産してしまった妻と夫のもとに迷い込んできた猫を何度も捨てにいく話で、なんか重苦しい雰囲気だなー。第2部、孤独な少年の心の闇を描いていて、かなり気が滅入ってしまう。第3部、あー、ここまで読んで…

鉄道員(ぽっぽや) - 浅田次郎

浅田次郎さんのあまりにも有名な短編集。8つの作品が収録されています。一番良かったのは、「ラブレター」。今の世の中ではあり得ないような白蘭さんの純真な心に切なく、そして愛おしい気持ちでいっぱいになりました。「角筈にて」も心にしみる良い話でした…

舟を編む - 三浦しをん

普段何気なく使っている辞書が、(最近はPCやiPhone版ですが)世に出るまでにこんなにも長い時間がかかっているなんて、そして多くの言葉を愛する人たちの努力と思いが込められているなんて、考えたこともありませんでした。主人公の馬締光也をはじめ辞書編…

始祖鳥記 - 飯嶋 和一

幕府の悪政に庶民が苦しんだ江戸時代天明期。主人公備前屋幸吉は、ただただ純粋に空を飛んでみたいそう思い、試行錯誤でその夢を追いかけます。その行動が悪政批判と受け取られ、役人に捕まるところまでが、第一部。第一部を読み終わり、なんとなく腑に落ち…

下町ロケット - 池井戸 潤

とても面白くて僕にしては短期間で読み終えることができました。読み始めた時は、想像とは全く違った話の展開で、「なんだ、たんなる企業小説か」と感じましたが、読み進めるうちにどんどんと引き込まれていきました。そして最後は感動の涙。佃社長をはじめ…

インサイド・アップル - アダム・ラシンスキー

アップルの製品とスティーブ・ジョブズのことは知っていても、それ以外のアップルという企業がどう運営されているのかについては、ほとんど語られることが無かったわけですが、元幹部や社員へのインタビューを通じ、アップルという企業について説明していま…

おかげさまいっぱい - 足立大進

臨済宗円覚寺派前管長の足立老師がとても分かりやすい文章で、仏教について語っている本です。何世代にもわたって繋がってきたこの命に感謝し、自然に感謝し、周りに感謝し、思いやりの心を持って日々を過ごそう、という趣旨のことが書かれています。 「自分…

日本企業にいま大切なこと - 野中郁次郎, 遠藤功

この本の主題は、アメリカ型の価値観から日本本来の価値観に基づいた経営へ、ということでしょうか。コンセプト作りが苦手な日本人にとって、現場力からくるイノベーションが鍵となり、それが日本の力であるということを説明しています。日本企業の価値観は…

エイジ - 重松清

連続通り魔事件の犯人が同じクラスのおとなしい男子生徒だった。そんなことが起こったら... いじめや、部活、先輩後輩の関係、勉強、塾、淡い恋心など、多くの中学生が経験するであろう話題を入れつつ、大人ではない、でも子供なんかじゃない、そんな宙ぶら…

まほろ駅前多田便利軒 - 三浦しをん

多田が、由良に言った台詞「だけど、まだ誰かを愛するチャンスはある。与えられなかったものを、今度はちゃんと望んだ形で、おまえは新しくだれかに与えることができるんだ。そのチャンスは残されている」は、心に突き刺さった。これだけでこの本を読んだ価…

ジェノサイド - 高野和明

突然死した父からのメールを受け取った大学院生が壮大な事件に巻き込まれるハードボイルド・サスペンス。『このミステリーがすごい!』の一位に選ばれた作品ということで、SF的要素、ハードボイルド、戦闘、冒険、ミステリー、青春、いろんな要素がてんこも…

霊長類 南へ - 筒井康隆

再読。全面核戦争で人類が滅亡する話で、パニック状態に陥った人間達の愚かさ醜さ残酷さを扱った筒井流喜劇。40年以上前に書かれた作品だけれど、まったく古さは感じない。ここに描かれている話は、核戦争で人類が滅亡する話であるにも関わらず、実にばかば…

アンジェリーナ - 小川洋子

「アンジェリーナ」「彼女はデリケート」「クリスマスタイム・イン・ブルー」「ガラスのジェネレーション」「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」「情けない週末」など、佐野元春の代表曲にのせて、小川洋子が奏でる10のちょと不思議な恋の物語。それぞれが、独…

猫を抱いて像と泳ぐ - 小川洋子

なんと言ったら良いのか語彙の少ない僕には言い表せませんが、独特の雰囲気をもったこの作品に引き込まれました。バスを改造して暮らしているチェス好きのマスターと出会い、チェス教わり、自分の居場所を見つけることができたリトル・アリョーヒンの数奇な…

悲しみの歌 - 遠藤周作

若い頃読んだのを再読。「海と毒薬」の続編と言われる作品で、戦時中に人体実験に参加した勝呂医師のその後を描いています。読んでいて、辛く苦しくそして哀しくなる作品ですが、ページをめくることはやめられない、そんな力を持っています。 「海と毒薬」か…

ねむり - 村上 春樹

はじめて村上春樹を読む。今まで特に意識して読まなかった訳ではないけど、なんとなく読む機会が無かった。これは図書館でたまたた目に留まったもの。この作品(短編)は、眠れなくなった主婦の不思議な物語。現実なのか非現実なのかが分からなくなっていく…

小暮写眞館 - 宮部みゆき

久しぶりに読んだ宮部みゆき作品。家族、友情、恋愛などが高校生の視点で描かれる青春小説。火車や理由、クロスファイアなどの社会派小説がお気に入りの僕としてはちょっと物足りなかったけど、この700ページを超える長い小説に飽きる事無く読めたのはやはり…

プロフェッショナルな修理 - 足立 紀尚

とても興味深く読む事が出来ました。着物、仏壇、椅子、ピアノ、スクーター、絵画などなど僕の知らない修理の世界、職人さんの世界がありました。僕が知らないだけで、日本にもこういった修理の需要が結構あるんだなーと、勉強になりました。この本を読んで…

オリンピックの身代金(下) - 奥田英朗

10月10日の東京オリンピック開会式にむかって、複数の時間軸が徐々に一つに重なりあいクライマックスになる構成は緊張感があり見事だと思います。主人公の東大院生の島崎とそれを追いかける刑事の落合、それに島崎の同級生で警察官僚の息子でTVマンの須賀、…

オリンピックの身代金(上) - 奥田英朗

戦後の昭和復興期に存在した大都市と農村地方の貧富の格差。東京オリンピックの開催準備で浮かれている日本人の中で、この格差に疑問を持ち始めた主人公島崎国男に自然と感情移入してしまいます。今後彼がどんなふうに国に挑んで行く事になるのか、どんな運…

狐笛のかなた - 上橋菜穂子

ファンタジーを読んだのは久しぶりです。そして、初めて読む上橋菜穂子の作品。 児童文学ということでしたが、大人が読んでも十分に楽しめる作品ですね。人の心が聞こえる“聞き耳”の力を亡き母から受け継いだ主人公・小夜の純粋でまっすぐでひたむきな心が胸…

隠し剣孤影抄 - 藤沢周平

八編の短編が収められています。どの作品にも秘剣の使い手(多くは下級武士)が出てきますが、皆人間味があって味わい深い作品になっています。 剣豪小説という感じはなく、剣技を扱っていますが、主題は家族や人の生き方を描いた小説かなと思いました。読後…

風魔(下) - 宮本昌孝

戦国時代を舞台にしたエンターテイメント。下巻でようやく小太郎が活躍する場面が増えてきて、面白さが倍増しました。小太郎と敵対する他の登場人物達との関係が、単なる善と悪という関係ではないところが良いです。最後は、ちょっとベタな終わり方と言えな…

風魔(中) - 宮本昌孝

中巻も登場人物が多い。戦国武将に詳しくない僕にはちょっと辛い。主人公小太郎の出番が少ないのもなんだかなー、という感じ。でも決して面白くないということはなく、十分面白いのです。唐沢玄蕃、湛光風車、曽呂利新左衛門、柳生又右衛門等の人物造形も良…

イニシエーション・ラブ - 乾くるみ

いったいどこがミステリーなんだ!単なる恋愛小説じゃないの?と思って読んでいたけど、まさか、まさかのラストでした。途中、なんか変だなーってひっかかる部分はあったけど、その真相にはまったく気がつきませんでした。完全に騙されました。映像のない文…

おすすめ文庫王国2012

また、「おすすめ文庫王国」の季節がやってきました。昨年のうちにネットで注文していたのですが、品切れだったようで、届いたのは1月になってから。この雑誌をペラペラめくりながら、今年はどんな本を読もうかなーと、あれこれ考えるのが恒例になってきまし…

2011年に読んだ本

ここ数年で一番少ない冊数でした。ベスト10をあげるとすれば、以下の10冊。1.天地明察 冲方 丁2.星を継ぐもの ジェイムズ・P・ホーガン3.ミーナの行進 小川 洋子4.夏から夏へ 佐藤 多佳子5.隠し剣孤影抄 藤沢 周平6.阪急電車 有川 浩7.家日和 奥田 英朗8.ア…