気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

豊臣秀長―ある補佐役の生涯〈下〉- 堺屋太一

この小説の特徴は堺屋太一らしく、経済という視点で戦国時代を見ている点でしょう。戦国時代の大名たちも戦の出費に苦労していたとか、兵農分離がなされていないがための苦労があったということは、あまり語られない部分だと思うのですが、そういったところの記述がとても新鮮でしたし、借金までして戦いをしたというのは驚きでした。

下巻は、信長上洛から本能寺の変の後の柴田勝家との対立あたりまでをまでを描いています。
秀吉が出世するにおいて、補佐役に徹した弟秀長の働きがいかに大きかったかを知ることができます。

最後に秀長が部下に言うせりふが、補佐役に徹した彼の偉大さを良くあらわしていると思います。
「兄者と俺は一つじゃ。どちらかが勝っても羽柴の勝ち、兄者が勝って俺が負けることはないのよ」

秀長がいなかったら秀吉の天下取りも実現していたのだろうか、きっと秀吉の人生も大きく変わっていただろうと思わずにはいられません。
また、秀長がもっと長生きしていれば。歴史の大きな流れは変わらないまでも、
秀吉晩年の歴史は変わっていたのではと思ってしまいます。

天下統一までは、四国、九州、小田原征伐などまだまだ続くわけですが、百戦練磨といわれた彼の武将としての活躍がどうだったのかも、詳しく知りたいところです。