カリグラフィー作家とチェンバロ製作者という僕にとっては非日常に生きる人の日常。
そこで織りなす男女の三角関係が残酷でありながらとても静かで悲しくそして美しい。 主要人物三名と一匹(犬)が皆何かを失っているという設定が、喪失感、孤独感や不安定さをより感じさせる。じつに小川洋子さんらしい心に沁みる作品だと思いました。小川さんらしい独特の雰囲気も好きです。
動画サイトでこの小説の題名にもなり、物語の中でも奏でられたラモー作曲のチェンバロ曲「やさしい訴え」を聞きましたが、哀しい調べが実にこの物語にぴったりな曲でした。