気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

蒲生邸事件 - 宮部みゆき

日本SF大賞受賞作。
予備校受検のために状況した受験生が、ホテル火災に見舞われ、時間旅行能力のある謎の男に助けられ、二・二六事件が起こった昭和11年へ。
時間旅行の能力を持った人物を主人公とするのではなく、普通の高校生を主人公にし、過去にタイムトリップさせるという設定がさすが。
歴史を知るっていったいどんな意味があるのだろうか、それを知ることで何が得られるのか、二・二六事件の詳細を知ることは、今の自分に何をもたらすのか、その答えは未だに僕の中には無いが、歴史を「知る」ことの興味をかき立ててくれるそんな力を持った作品だ。若い頃にこういった作品にめぐり合っていれば、歴史をもっと好きになっていたのにと思う。
歴史教科書を読んでも無味乾燥な出来事としてしか捕らえらないし、TVドラマや映画は架空の出来事としてしか捕らえられない。『坂の上の雲』を読んでも、どこか他人事のように感じてしまう。でも、『蒲生邸事件』は、架空の出来事であるにも関わらず(いやだからこそ)、過去の出来事がよりと身近に感じられるし、歴史に関わった人々を等身大の人間として感じることができる。
単なるエンターテイメント小説ではない、単なるミステリー小説ではない、単なるSF小説ではない、文学の香りがする作品です。

蒲生邸事件 (文春文庫)

蒲生邸事件 (文春文庫)