気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 - 山本七平

小松真一氏の『虜人日記』の内容を引用しながら、なぜ日本は戦争に敗れたのかについて論じた本です。
『虜人日記』では、21の敗戦の原因を述べていますが、山本氏の説明を読むことで、「ああ、なるほど」とうなずくことしきりです。
「物量、物質、資源、総て米国に比べ問題にならなかった」
「日本の学問は実用化せず、米国の学問は実用化する」
「基礎科学の研究をしなかったこと」
など、技術的な敗因も上げていますが、本質的な敗因は、それ以前の問題で、日本人の思考とか文化にあるということを強調しています。
「日本の不合理性、米国の合理性」
「反省なきこと」
「日本文化の確立なき為」
「日本文化に普遍性なき為」
「日本は人命を粗末にし、米国は大切にした」

それにしても、この内容が30年以上前に書かれたということにちょっと驚いています。30年経った今でもそのまま通用する内容だし、日本人あるいは日本という国も本質的には何も変わっていないんだということが良くわかります。
いや、30年前ではなく、戦時中からいやもっとまえの明治時代から変わっていないということを。そして、その敗因となっているものは僕自身のなかにも存在していることを。
題が「なぜ敗れたのか」ではなく「なぜ敗れるのか」とした意味も、ここにあります。

僕にとっては、一番ショックだったのは、最後の結びの以下の記述です。

戦後は「自由がありすぎる」などという。御冗談を! どこに自由と、それに基づく自由思考と、それを多人数に行う自由な談論があるのか、それがないことは、一言でいえば、「日本にはまだ自由はない」ということであり、日本軍を貫いていたあの力が、未だにわれわれを拘束しているということである。

戦争に興味が無い人も読んで損はない本だと思います。