星新一 一〇〇一話をつくった人
ショートショートという分野を確立したSF作家星新一の一生とSF界の発展の歴史を描いたノンフィクション作品です。
第29回講談社ノンフィクション賞、第28回日本SF大賞、第34回大佛次郎賞、2008年日本推理作家協会賞、第39回星雲賞ノンフィクション部門などの数々の賞を受賞しています。
中学生から高校生にかけて、星新一の大ファンだった僕は、当時文庫本で出ていた作品はほとんど読んだと思います。でも、いつの頃からか全く興味がなくなり読まなくなってしまいました。その後の興味は、筒井康隆や小松左京、安部公房といった作者に移っていきました。
そんな僕でも、この本が新聞の書評欄に掲載されてから、ずーと気になっていました。その約2年後の今、こうして実際に読んだということは、僕の心の中のどこかにまだ、「星新一」という作家が生き続けていたということなんだと思います。
間違いなく、星新一は本を読む楽しさを僕に教えてくれた作家のひとりですから。
さて、この『星新一 1001話をつくった人』ですが、SFという新たに生まれた分野を切り開いていった先駆者の苦悩が描かれており、フィクションでは得られない、生身の人間の姿ががここにはありました。人気作家ということで、苦労はあっても、作家としての苦悩などないのだろうと勝手に思い込んでいた自分の思慮の浅さを思い知らされるそんな作品でもありました。
『絶対音感』もそうでしたが、最相葉月氏の徹底した取材力には感服です。ハードカバーで、560ページという大作ですが、星新一の作品を読んだことのある人に読んでほしい本ですね。
若い頃SFに夢中だった僕には、小松左京、筒井康隆、矢野徹、眉村卓、光瀬龍などのSF作家も登場し、まさに日本SF界の黎明期が描かれてて、SFファンだった僕にはとても興味深い内容だったことも、あわせて記しておきます。
大人になって読む星新一のショートショートがどんなものなのか、機会があれば、再読しようと思います。
その前に、『人民は弱し 官吏は強し』『声の網』を読むつもりですが。
- 作者: 最相葉月
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/03
- メディア: 単行本
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