気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

クロスファイア - 宮部みゆき

生まれながらにパイロキネシス(念力放火能力)という特殊能力を持つヒロイン、青木淳子の悲しい運命を描いた名作。それにしても、最初の数ページで一気に読者を物語の中に引き込んでしまう宮部みゆきの圧倒的な筆力に脱帽です。本当に彼女(青木淳子)は、確かにこの小説の中で生きていました。
凡人が考えると、「超能力を持つ」ということは、とても素晴らしく、光り輝く未来が約束されているかのように感じがしますが、この本を読むと、それが如何に浅はかな考えかということを思い知らされます。
出来ることならば、僕の力で彼女を救ってあげたい、僕の力ではどうしようもないことはわかっていますが、心からそう思います。
この物語は、「火車」同様、独特な読後感があります。やり場のない悲しみ、憤り、切なさ、疑問、そんなものが、読み終わったあとも長い時間僕の頭から離れるませんでした。
ところで、この小説を読んで、筒井康隆の七瀬シリーズを思い出してしまいました。もう随分前のことなのではっきりとは覚えていませんが、あれも、最後は悲しい結末だったと記憶しています。

クロスファイア(上) (光文社文庫)

クロスファイア(上) (光文社文庫)